Project&Request
□1st Anniversary
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温度計を、拳で叩き割りたくなるような陽気だ。
僕の隣でディーンはぐたっとベンチに背を預けながら呻いた。
「んあ゙〜ぢぃ〜」
「そうだね…ちょっと外に出ただけなのにすぐ汗だくだ」
数分前。狩りの情報収集をしようとモーテルから2人して出てきたところ、あまりの暑さに気力が全て吹き飛んでしまったのだ。
道の向こうにあった公園の前にアイスワゴンを止めて、運転手が車中でハンドルにもたれながら休憩していた。こう暑いと売れるんだろうね、と額を拭いながらディーンを振り向けば、既にフラフラとワゴンへ高速で接近中。
止める気力すら無く見ていたら、ばん!とワゴンのドアにぶつかってゾンビのように窓にへばりつくもんだから、運転手は度肝を抜かれた顔をしていた。
「はしからはしまでだ!全てもらう!商品を今すぐ全部俺にくれ!」
と銃を出しそうな勢いでディーンが叫んだ時、やっと僕は止めに走ったのだった。
…そんなわけで、夏特有のじわじわくる暑さを前にして、僕らは公園のベンチでアイス舐めながら、へばっていた。
「……僕さぁ、」
「あー?」
手もとのシャーベットが体温ですぐさま溶けていったので、もはやジュースのそれを睨みながら、言う。
「公園のベンチ見ると嫌な事思い出すんだ」
「はー、うっかりペンキ塗りたてに座っちまったとか?」
「ディーンじゃないからそんなトラップには引っかからないけど」
「おいおい。接着剤たっぷりのタバスコとかに引っかかってたのはどこの誰だ」
「前に僕がシャワー浴びてるスキに、公園へ逃げたどこかの誰かさんを追いかけたら、ベンチで他の男と抱き合ってたのを目撃した体験を思い出すんだよね」