Project&Request
□Snow white〜Basic Instinct〜
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その日、立ち寄った街はとても賑やかな大きい街だった。
緑と赤の飾りつけがあちこちで街を彩っていて、目に痛いほどだ。そんな街中の、クリスマス特設簡易スケートリンクで僕は振り返る。
「ディーン、無理しなくていいんだよ」
「いいや、無理なんかしてないね。いいから先行けよ!」
スケートやろうぜ!と言いだしたのはディーンだったけど、どうやら経験は浅いらしい。
手すりに掴まって子鹿のように、可愛らしくぷるぷるしながらも立とうとしていた。
僕は大学で少しやった事があるけど、滑れないなら滑れないって早く言えばいいのに。
氷上でターンして、懸命に立とうとしてるディーンの肩へ手を置いて顔を覗いてみる。
「そんなとこにつかまってないで、僕につかまればいいだろ。支えるから」
「余計なお世話だぜ、サミーボーイ!俺だって本気出せばちゃんと、のわっ!」
いーっと歯をくいしばりながら僕を振り返った拍子に、ディーンが態勢を崩した。
「おっ、と。ほら、言わんこっちゃない」
前のめりに倒れそうになった体は、そのまま僕の胸にぶつかった。
「……むぅ」
お前の胸筋、すげぇ硬い!超痛い!!とか言いながら僕を見上げる顔が、何だかいつも以上に可愛くて一瞬心臓が止まった。雪とか氷の効果ってのは本当にすごいんだな…ゲレンデ効果など、眉つばものだとばかり思っていたけれど、氷上の兄貴はさながら妖精だった。コートの上に巻いたマフラーを、肩にかけ直す姿すら、1枚の絵のようで。
「おい。もういい、手ぇ離せよ」
「NO」
「未だかつてないほどの、はっきりとした返答!」
リンク上は人も多く、手を離せば誰かに激突必至である。
「誰かにぶつかって兄貴がケガでもしたら……兄貴が、ぽきっと折れちゃったらどうする!!」
「お前は俺を何だと思ってんの?氷細工?」