SPN

□夜に謳い、君と遊ぶ
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そうっと扉が閉まる音を聞いて、
僕もまた音を立てずに起き上がる。
「…………」
荷物……は、ある。
インパラのキー……ある。

思考する事、数秒。さっと服を着て、部屋を出て行った兄の後を追う事にした。

勘の良い兄なので殊更ゆっくりと後をつける。ディーンは道ばたの自販機で酒を数本買ってベンチに座って飲みながら、何だか気乗りがしないって感じで肩を落としている。落ちつかないようにソワソワしたり足を組みかえたりしながら酒を飲む兄を陰から見る僕。

「何がしたいんだろう……かわいいけど」
「……あんたこそ、何してんの?」
「え?僕はあの人の尾行を……」
振り向いたら職務に忠実な警察官が立っていた。

とぼけるなよここいらで出没してる変態ってあんただろ、いや違いますよ僕は一般人で善良なる市民ですよ、いやいや善良な市民はこんな夜中に男を尾行したりしないって、襲う気だったの?とりあえず一日お泊りコースでいいよね?一緒に来てもらおうかな。
といった応酬をしている間にディーンが動いてしまった。完全に何かを勘違いしてる警官を何とかかわし、ごまかして僕は慌てながら足どりを追うのを再開した。

……それが、数分前の出来事だった、はず。

「ど、どういう事……?」

兄の姿を見つけた時、僕の目の前に広がっていたのは予想だにしなかった光景。
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