SPN

□彼について本気出して考えてみた
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〜喜ばしい欠陥〜

「結局、何が言いたいのよ、キャス」
相談したい事がある、と彼に呼ばれてから数10分。やっと私はそれだけ聞いた。2人で話をする時によく使う、人気の無い波止場に来た途端、普段の彼からは考えられないほど、つらつらと言葉の波がその口から流れてきて驚いた。けれどその言葉のほとんどに脈絡は無く、読解する前に流れていってしまうので、私は彼の口が止まるまで黙って地平線へ引っ張られてゆく太陽を見ていた。
「だから先程から言っているように……」
「ほとんど聞き流してしまったわ。あなた、パニックを起こしているんだもの。いつものように腹が立つほど冷静に、言いたいことを簡潔にして喋りなさいよ」
ある人物に対してだけ、冷静さを欠いてしまう彼は、私の物言いに少しだけ不満そうに黙りこんでから、考え考え口を開く。
「最近、私はおかしい」
「あら、自覚しただけ、たいしたものだわ」
「何をしていてもディーンの事を考えてしまうし、とにかく顔を見たくなる。そして彼に触れたくなるんだよ。この衝動が何なのか、わからない。わからないんだ」
「で、その台詞をディーンにそっくりそのまま、そう言ってみたの?」
「……聞き流していたのでは」
「……冗談で言ったんだけど。本当に彼に話しただなんて!」
「私が説明している間、彼は怪訝な顔をしてずっと眉間に皺を寄せていたのだが、彼が言うには……私は疲れているのだ、と」
「あぁ、言いそうよね、ディーンなら」
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