SPN

□午後十一時の攻防戦(SD)
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「……ディーンが悪いんだからな……」

ちょっとした狩りを終えた、いつもの夜。あと一時間で日付が変わるころ。
僕は歯ブラシと歯磨き粉を手に、安いベッドに横たわるディーンを見下ろして呟いた。

少し目を離した隙にいつもより多めに酒を飲んでしまったディーンに、なんとかシャワーを浴びさせたまでは良かったが、どうやら下着を履くところまでで力尽きたらしい。
水を汲んでやって振り返った時には、下着のみのディーンがベッドに倒れこんでいた。

「ちょっと、ディーン……風邪ひくよ」
早くも可愛らしい寝息を立て始めた兄に最早何を言っても無駄だとは思ったけれど、とにかく声をかける。
「ねぇ、ディーン。せめて、上に何か……うっ!」
兄の姿をしっかりと視界に入れてしまった時、心底後悔した。陶磁のような肌が、曲線を描いてなめらかに構成されている身体。それが湯上りの所為もあって、ほんのりと赤く色づいて艶めかしく横たわっているのだ。
髪はしっとりと濡れそぼり、閉じられた長い睫毛の先には水滴が輝く。そしてその下の、薄く開いた唇と、吐息の漏れる音。
コンマ数秒で目を離したのに、その姿はしっかりと僕の目蓋に映り込んでしまっていた。
「う、うぅ……っ!信っじらんない!」
信じらんない、ホント!
僕が、日頃どんだけ我慢してると思ってんの!?

兄に対する欲求不満を、なんとか日々、理性で抑えこんでいる弟に対してこの仕打ち。
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