天使のザレゴト

□蒼月記〜蒼き血の契約〜
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 甘味屋で買った、可愛らしい小粒な饅頭を小脇に抱えて歩きながら、俺は妙に気分が高揚していた。

 狭いが何処よりも居心地の良い我が家で待つ、最愛の妹。

 その妹が、この饅頭を見たらどんな顔をしてみせるだろうか?

 俺は思わず綻びそうな頬を抑えながら、騒がしい町屋通りを早足で抜けていこうとしていた。





 が、その時――

 ふと耳に入った会話に、俺は思わず足を止める。

 街角に集った少年少女の他愛ない噂話……

 俺は視線は向けずに、ただその会話にだけ耳を傾けていた。





「なぁ、知ってるかぁ?

 月が蒼く染まる晩に一人で出歩くと、蒼血鬼が出るらしいぜ?」


「そうげつき……?」


「何だよ知らねぇの!?

 この地域に古くから伝わる伝承の化け物だよ。

 なんでも、人の姿をしてはいるが、人の血を啜るんだってよぉ」


「えぇっ? 人の血を飲むってこと!?

 怖〜い!!」


「けど、契約者にならなけりゃ平気なんだってよ。

 其奴等、どういうわけか、契約した奴の血しか飲まねぇって話だから。

 で、その契約者を探す夜ってのが……」




 蒼月夜〔ソウゲツヤ〕。

 俺は、喧騒の中に掻き消える程の小さな声で呟いた。


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