天使のザレゴト
□蒼月記〜蒼き血の契約〜
2ページ/15ページ
甘味屋で買った、可愛らしい小粒な饅頭を小脇に抱えて歩きながら、俺は妙に気分が高揚していた。
狭いが何処よりも居心地の良い我が家で待つ、最愛の妹。
その妹が、この饅頭を見たらどんな顔をしてみせるだろうか?
俺は思わず綻びそうな頬を抑えながら、騒がしい町屋通りを早足で抜けていこうとしていた。
が、その時――
ふと耳に入った会話に、俺は思わず足を止める。
街角に集った少年少女の他愛ない噂話……
俺は視線は向けずに、ただその会話にだけ耳を傾けていた。
「なぁ、知ってるかぁ?
月が蒼く染まる晩に一人で出歩くと、蒼血鬼が出るらしいぜ?」
「そうげつき……?」
「何だよ知らねぇの!?
この地域に古くから伝わる伝承の化け物だよ。
なんでも、人の姿をしてはいるが、人の血を啜るんだってよぉ」
「えぇっ? 人の血を飲むってこと!?
怖〜い!!」
「けど、契約者にならなけりゃ平気なんだってよ。
其奴等、どういうわけか、契約した奴の血しか飲まねぇって話だから。
で、その契約者を探す夜ってのが……」
蒼月夜〔ソウゲツヤ〕。
俺は、喧騒の中に掻き消える程の小さな声で呟いた。