お題企画

□出会う
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24.出会う
(ナツグレ)
※ナツとグレイが、10年前に出会っていたらという捏造。








「…オレ達の出会いはさ、」

「ギルドでケンカをしたのが始まりだったよな?」

「…そうだな」


オレとナツは、ギルドの裏にある湖のほとりにいた。
正確にいうと、ほとりで本を読んでいたオレの所にナツが来たのだ。
オレは、読んでいた本を閉じた。


「どーしてまたそんなこと?」

「ん…いや、なんとなくな」

「??」


ナツはオレの顔を覗き込んでキョトンとしていたが、
すぐにニッと笑った。
その明るい笑顔につられ、オレも微笑む。


妖精の尻尾にも、この数ヵ月で様々な仲間が増えた。
ルーシィにウェンディ、もともとは幽鬼の支配者に所属していたガジルにジュビア、死んでいたと思われていたリサーナ…
個性のある仲間が集まり、本当に賑やかなギルドとなった。


たくさんの…出会いがあったな。


そう思っていると、


「ナツー!!ミラが呼んでるよー!!」


ギルドの裏口から聞き覚えのある声。
ナツの相棒、ハッピーだ。
翼を広げ、こちらに向かってくる。


「ミラがオレに??」

「うん!!珍しいものくれるかもよ!?」

「美味い炎とかか!??
…グレイ!ちょっと席外すなッ!!」


ナツは立ち上がると、ハッピーと共に走り去っていった。
その背中を見送るとオレは寝そべった。


「…オレ達の出会いは、さ…」


オレは再び、ナツに向けた言葉を口にし、透き通るような蒼い空を見た。


「(本当は、ここじゃねぇんだよな)」



*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*



ウルがデリオラを封じた、あの日から数日後。
リオンとは別々となり、一人、山道を歩く。


『西の国に行けば、私より強い魔導士は山ほどいる』


ウルのその言葉を信じ、足を進ませていた。

その途中の出来事。




「…完全に迷った…」

夜。
地図を持たずに山道を歩いていたことで、オレは道に迷ってしまった。
…まぁ当然といったら当然だけど。
暗い山道に、恐怖はなかった。
だが、


「(これじゃ、西の国に行けない)」


どうしよう。
そう思っているときだった。


「?!」


ガサッ。
後方の茂みから音。
すぐさま反応し、魔法を発動するために構える。

音が少しづつ迫ってくる。
…茂みから現れたのは、


「人!?」


人だった。

桜色の髪に、ウロコのようなマフラーを首にした、
オレと同じくらいの年の少年が、こちらを見ている。


「…何やってんだ、お前」

「あ、えっと…
…迷った?」


疑問符がついてるが正直に言う。
馬鹿にされるのを覚悟しての答えだった。
しかしその少年は、


「ふーん…
…ここの山のことならだいたいわかる!!


案内してやるよ!!!」


そういったのだった。
暗闇の中だったのにもかかわらず、彼の笑顔ははっきりとわかった。
明るい…と、思った。


「ほら、行こうぜ
どっちの方向に行きてぇのか??」

「え、あ、に、西の方!」

「おっけー!」


差し出す彼の手をとり、オレと少年は歩きだした。


「(…こいつの手、すっごくあったかい…)」


初対面なのに。
彼の暖かい手、優しさ、たくましさ…それら全てに、
すごく、ドキドキした。





「ほら着いた!!
ここを下れば町に出る!!」

「…!」


その数十分後にはオレの目指していた場所へと着いてしまった。


「(なんて奴…)」


内心、そう思った。


「じゃあオレ、父ちゃん待たせてるから!!」


ここまで連れて来てくれた少年は、オレの肩にポン、と手をのせると、
去っていこうとした。


「あっ、えと…ありがとな!!」


その背中に礼を言う。
それを聞いた少年は振り返り―…


「おぅ!!また、会えるといいなッ!!!」


先ほどの明るい笑顔で言った。
…自分が溶けてしまいそうな、暖かな笑顔で。
脈を打つスピードが、徐々に上がっていく。
なんでこんな気持ちになったのか、オレには分からなかった。


その後、オレは妖精の尻尾に辿り着き、そのギルドに入ることにした。

…入った3年後。
桜色の髪に、ウロコのようなマフラーをした少年が、このギルドにやってきたのだ。
オレは驚いた。
あの時の少年が今、再び目の前にいる。
自分を、不思議な気持ちにさせた少年が。
印象に残る風貌、輝くような笑顔…
―忘れるハズ、なかった。



その少年は、『ナツ』と名乗った。



*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*


「(本当は10年前に、オレ達は出会ってるんだ)」


この事実は、誰にも伝えてない。
もちろん、ナツにもだ。
おそらく、本人は、あの日あったのがオレだったなんて気付いていない。
名前も伝えてないのだから。
…なによりも、


「(初恋のヤツがナツだったなんて、言えねぇし)」


昔のことを思い出して、くすりと笑う。

あの日のことは、今も憶えている。
あの時、あの場所でナツと出会っていなかったら。
妖精の尻尾にいなかったかもしれないし、そこでナツに会うこともなく、
お互い別々の道を歩んでいただろう。
それに、恋人同士という関係も…

この道を歩んで、「間違った」と思ったことはない。
十分楽しいし、幸せだ。
だから、



「(あの日の出会いは、オレにとって、必要なものだった。)」



オレは、平和な時間が流れていることを感じながら、目を閉じた。










Special Thanks!:)sweets様

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