お題企画

□甘える
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70.甘える
(ナツグレ)





ふんわりとした心地好い春風がギルド内を包む。中央の机と椅子が並ぶ場所にナツとグレイは二人仲良く腰かけていた。

「コーヒー、もう空か?」
「おう。」

「まだ飲む?」

「大丈夫。」

ナツもグレイも相手を気遣い、いつもこんなのほほんとしたマイナスイオン発生中。

しかし、あのナツがこんなに相手を大切に、宝物のように扱うことは初めてのことだ。がさつで何をしても物を壊す、あのナツがだ。

「なぁ、グレイ他にして欲しいことは?」
「とくにねぇなぁ。…じゃあ隣に座っててくんね?」
「そんだけ?」
「そんだけ。」

グレイに出会ってナツは変わった。喧嘩上等で、グレイと顔を会わせただけで"喧嘩"する二人だった…。だが、グレイの涙を見てから…。グレイの全てを知ってから。ナツは変わろうと思った。
"こいつに涙は似合わねぇ。"
泣かしちゃならねぇ。
何よりこいつを甘やかしたい。甘やかしてやりたい。

「本当に隣で座ってるだけでいいのかよ…?」
「ああ。隣にただいてほしいんだよ。」
「本当に?」
「本当に。」
「ホントの本当に!?」
「…んだよぉ?」

………"なんで、もっと甘えてこねぇんだろ?"


「グレイー…」
「あ…。」
「は?」
「やっぱー…もう一つだけ…良いか?」

グレイから、グレイから求めてきた!

「いいい、良いに決まってんだろ!!?それに一つじゃなくていい!!いくつだって言って欲しい!!」

きょとんとしたグレイにナツはにんまり笑う。

「ー…じゃあ。」
「…(ごくり)」
「抱き締めてくれないか?」
「お…、おう!」


ナツは力強くいっぱいいっぱいに抱き締めた。

苦しいってグレイが訴えるためにナツはさらに力を込める。
求めてくれたことが一番嬉しくて嬉しくて仕方がなかったからだ。

「おい、ナツ…?」
「ん〜?」
「もう大丈夫。充分だぜ?」
「俺がまだ充電中。」
「はぁ!?充電!?」
「そう。」

あたふたするグレイを力づくで押さえつけてたっぷり充電。
氷の魔導士…。とは言っているが、やはり温かい。心地好い体温だ。

「…キスしてぇ。」
「…ぇ?」
「今とてつもなく…、キスしてぇ。」
「は?」
「キスしていいか?」
(ちょ…待てよ)
「あー。もう我慢できねーよ。」
「お前が求めてどうすん…。」

ナツはグレイの言葉を遮る。
グレイの言葉の長さに待てなくて、気づいたらー…。みたいな言い訳をグレイは想定するまでもなく、凄く驚いたらしく硬直状態。
口を離してもグレイは全く動かない。

「おーい!グレイ?」
「…」
「おい!?」
「…はぁっはぁはぁ。」
(おいおい。グレイの奴どうしたんだよ。もしかしてー…)

(息するの忘れてた…のか?)

「ぷっ…。」
「おっ、お前なぁ///」
「あははは!」
「笑ってんじゃねぇ!?」
「だって可愛い!」
「可愛くねぇ!?…ったく。」















(こうやって何度も甘えてくれよ。)














(けど、甘えていいのは俺限定…!)










Special Thanks!:)野うさぎ様

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