お題企画

□悩む
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9.悩む
(ナツグレ)



「なぁ…俺、やっぱり変か?」

って…いきなり俺にそんな事言われても、何の事かさっぱりわかんねぇじゃないか。

「…変って…何が?つーかさ、お前が悩んでる姿って…似合わねぇな。」
「う、うるせぇ!」

コイツは何故か顔を紅くして、もにょもにょと口ん中で何か言ってる。

「だってよ…俺だってわかんねぇんだよ…」
「あ〜うぜぇよ、ナツ!てめぇ、あそこの【悩み事相談所】にでも行ってこい!」

俺が指を差したのは、最近ギルドの片隅でルーシィがアルバイトで始めた【悩み事相談所】。
噂によると、見かけに寄らず、的確なアドバイスが貰えるって事らしい。

「一人で悩んでねぇで、お前が変かどうか、聞いて見てもらってこい!」

ナツは俺をチラチラと見ながら、渋々ルーシィの方へと歩きだした。
俺はホッと息を吐き、テーブルの上の少し冷めたコーヒーを口に運ぶ。


お前が変かどうかって?
何となく俺も気付いちゃあいるけれど。俺から言える事じゃねぇよな。
なんて、俺も悩んでるんだ。


朝、顔をあわしても、妙によそよそしい態度を取ってるとか。
俺の飲みかけのコーヒーを、苦手なくせに口にしたりとか。
今まで普通に俺の裸見てたくせに、最近は服を着ろって口煩いとか。

それに…

最近、やけにナツからの視線が熱く感じるとか。

「やべ…俺も変かもしんねぇ…」

ルーシィに相談しろと言った手前もあるし、ナツの事も気になる。
俺はコーヒーを飲み干すと、ナツが向かった方へと足を向けた。


※※※※※※※※※※※※※※※※


朝、グレイにおはようの一言が言えない。
グレイが飲んでいる、コーヒーの味が知りたくてたまらない。
グレイが服を脱いでると、何故か自分が焦ってしまう。

それに、

最近、何故かグレイをつい眼で追ってしまっている。


俺は思いつく限り、自分が変と思う行動をルーシィに話した。

「…なぁ、ルーシィ?俺って変か?」
「ん〜それって、変って言うよりも…」

俺の最近の行動を聞いて、ルーシィは意地悪そうな笑顔をこちらに向けてきやがった。
すっげぇ、嫌な予感がする…。

「そうねぇ…じゃあ、ここで質問。必ずどちらか答えてよ?ナツ。」
「う…うん。」

俺は姿勢を正し、ルーシィの質問に答える準備をしたとたん、ルーシィの顔が目の前に近づいてきた。

「ナツは、私とグレイのどっちの裸を見てみたい?」
「は…はぁ?!」
「ほら、答えて!ナツ。」
「え?!や…その…」

俺…きっと今、顔が真っ赤なんだろうな?
何だかいつもより体温が高くなってる気がする…。
そんなことを考えながらも、俺はしどろもどろ状態で、直ぐには答えられなくて。

「答えによっては…私からナツに良いことしてあげてもいいんだけどな?」
「うえぇ!!い、良いことってて…いや!あの…」

俺の身体中から嫌な汗がダラダラと流れてくるのがわかる。
でも俺、そんな直ぐに答えられんねぇよ!だから悩んでるんだ!相談に来てんだろ?!

「ほら!ちゃんと答えて。」
「え…えっと…」
「なんだ、ナツ。まだ相談中か?」
「グレイ?!」
「あら、本人が来ちゃったか…」
「何の事だ?」

誰が嘘だって言ってくれ…。
俺の悩みの元である、グレイが俺の横の席に腰掛けた。
俺の汗はまだ止まらねぇ。
えっと…俺、やっぱ変だよな…。


※※※※※※※※※※※※※※※※


「…なぁ、ルーシィ。その質問、何の為に必要なんだ?俺には理解出来ねぇんだが…」

ルーシィがナツに聞いた質問内容を確認した俺が馬鹿だった。
ナツは相変わらず大汗かいたまま、真っ赤な顔で両手を膝の上で握り締めて俯いてやがる。

「う…うぅ…」
「何よ、ナツ。そんなに悩む事かしら?!」
「だ、だってよぉ…」
「まぁ、普通だったら…ルーシィを選ぶと思うけどな。」

俺がそう言った瞬間、ナツがすんげぇ驚いた表情で俺を見つめた。

「なんだよ…男なら普通じゃねぇか…なんで俺の裸とルーシィとで悩んでるのか、わかんねぇぜ。」
「う…。そ、そうか…?」
「ふふ。じゃあ、グレイには私から良いことしてあげる!」

俺がルーシィの声に振り向いた瞬間、頬に柔らかい感触を感じた。

「え…?」
「あ…あぁ!!!」



次の瞬間、俺は…
ナツの腕の中に居た。


※※※※※※※※※※※※※※※※


「ルーシィ!!勝手な事すんな!グレイは俺のもんだ!!!」

目の前でルーシィがグレイの頬にキスしたのを見た俺は、次の瞬間グレイを抱きしめていた。
そして、俺の目の前には…驚いたグレイの顔が…。

「な、なんだよ…お前…」
「あ、あ…えっと…」

グレイは俺に抱きしめられたまま。
俺はグレイを抱きしめたまま。
お互いの顔を見つめ合っていた。

「あ〜馬鹿らしいったらないわね!」

俺達を見てルーシィは微笑んでいた。
それはまるで、俺達の事を見て呆れた様子のようで。

「もうナツの答え、出てるじゃない。」
「あ…!」
「私より、グレイの方が良いんでしょ?」
「ちょ…ナツ、俺の方が良いって…?!」

俺は勇気を出して、グレイを抱きしめた。
グレイの表情が見えなくなっちまったけど、そんなことはどうでもいい。

「ナツ?」
「グレイ。俺、お前の事好きだ…」
「え?!」

少し抱きしめた腕の力を緩めて、ちゃんとグレイの顔を見て、俺はもう一度言った。

「グレイ、好きだ。お前とずっと一緒に居てぇ。」
「ば…馬鹿ナツ…」

グレイは顔を真っ赤に染めて、俺の胸に顔を埋めた。

「グレイ…?」
「俺も…馬鹿かもな…」
「誰が馬鹿なんだ?グレイ?」

次の瞬間、俺の唇に柔らかいものが軽く触れた。


※※※※※※※※※※※※※※※※


「あ〜もう!二人で何好き勝手やってるのよ!」
「ルーシィ…お前の悩み事相談、すげぇな…!」
「あぁ…噂は本当だったって事だな。」

俺はグレイを抱きしめたまま、グレイは俺の胸に顔を寄せたままルーシィに声をかける。

「はいはい。そうね、悩み事無くなった様で良かったわ。じゃぁ、お代頂きましょうか。二人で5000Jね。」
「え?!高くねぇか?」
「ナツはともかく、俺からも金取るのか?!」

俺達は口を揃えて異論を唱えたが、ルーシィは軽く無視して俺達から金を徴収していった。

「ついでに、的確なアドバイスで両思いになれましたって、皆に宣伝よろしくね!!」

ルーシィはそのまま、抱き合った俺達を置いて、ギルドの喧噪の中へと姿を消した。

「すげぇな、ルーシィ…」
「ハンパねぇな…」

二人で大きく溜息をついて、はたと見つめ合えば、俺はグレイを抱いたままだって事に改めて気付く。

「あっ…と…その、グレイ。」
「え?!…な、なんだよ…ナツ…」
「も、もう一回、キスしてくれ。」
「う…やだ…」

俺の腕の中でモジモジとするグレイを強く抱きしめて、俺は顔を近づける。

「なぁ…良いじゃねぇか…ほら。」
「ん…馬鹿ナツ…」
「馬鹿でも良いじゃん。な?」

もう、悩まねぇ。
俺はお前が、グレイが好きだ。

グレイの唇と俺の唇が触れ合って。
お互いを思う気持ちと同じ様に。俺達はそっと寄り添った。










Special Thanks!:)ラブコック様

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