お題企画
□焦がれる
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1.焦がれる
(ナツグレ)
いつも騒がしさに包まれているギルド。
その中心で暴れているあいつを喧騒のなかから見つけるなんて、簡単なこと。
(あーあ、またやってら)
エルザに怒られるんだ、とこのあと起こるであろう惨劇を思い浮かべながら、グラスに入っていた水を飲み干す。
きれいな桜色をなびかせているそいつからは、それとは見合わないほどの怒声や豪快な笑い声が聞こえる。
「あいかわらずね、」
「ミラちゃん、ほんとだよまったくナツのやつ、少しは静かにしろってな」
「ナツじゃないわ」
「ん?」
「ナツじゃなくてグレイが、あいかわらずね、って言ったのよ」
「なんで、俺?」
「いつもナツを見てるわ」
「…え」
「ふふふ、」
なにかある、と思わせるような笑みを浮かべながら、ミラはカウンターの奥へ行ってしまった。
(ミラちゃんたまに何考えてるかわかんねぇよなあ…)
俺、そんなナツのこと見てたか?
てかあいつがうるせぇから、つい視界に入るだけだろ
いつもいつも、うろちょろする桜色が目障りったら……、
(あれ、)
(俺っていつから、ナツを見てたんだっけ、)
―――
例えば、たたかわなければいけないとき。
どんなに強いやつが相手でも、ナツはちっとも怖がらない。
まっすぐに向かっていく。
[俺が、行く!]
[ちょっ、待て!、ナツ!!]
そのまっすぐさが俺は怖くて、
行かないで、
そこに行ったらきみが
帰ってこなくなる気がして、
いつも、目を離せなかった。
いつも先を歩くおまえ。
それを認めたくない俺は
いつだっておいてかれないように
その背中を追った。
(あぁ、そうだ)
(いつも俺はこの背中に、)
―焦がれていた
Special Thanks!:)みな様