あのおはなし。

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在体離脱。



立ち並ぶ紺色の壁。
黒い床に吐き捨てられた汚い唾液。
蔓延している灰色の気体。

無様なこの町並みの真ん中に彼女はいた。
沢山の人が通る白線の上。

まるでそこにあるのが当たり前のように彼女はひっそり立ちずさんでいる。

黒と白の線を跨ぎながら僕は彼女に近づいていく。
両足で踏みつけた赤い線。
彼女は泣いていた。


「───── 」

僕は声をかける。

すると

彼女は僕の方を見もせず
ただ真っ直ぐと前を見て微笑んだ。


「ありがとう」


涙を流したまま。









僕はいなくなった。



-end-



2011/06/12
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