疾走少年

□雪まろげ
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彰子を説得した昌浩は彰子を庭へと連れ出し、まだ誰も足を踏み入れてない綺麗な雪の上を歩いた


バサッ
と、昌浩が雪の上に倒れた
「どうしたの?大丈夫昌浩」

急に雪の上に倒れた昌浩を心配して彰子が声をかける

「雪の上に寝転がるの気持ちいいよ。彰子もやってみたら?」

「でも...」

渋る彰子の手を引っ張った

「きゃっ」

サクッっと雪の中に倒れる彰子
最初は驚いた顔をしていたが、暫くすると雪の感触に目を細めた

「気持ち良いでしょ?」


「えぇ」

彰子の反応を見て昌浩は満足げに笑った。


しかし、笑う昌浩の後ろに不穏な陰が...

「とりゃぁ!!」

「うわぁぁぁ!?」

突然大量の雪が降ってきた
物の怪の奇襲を喰らった昌浩は為すすべもなく雪に埋まっていく

「昨日の仕返しだ」


雪に埋まる昌浩を見て物の怪は二本足で立ち器用に前足を腰に当てて満足そうにふんぞり返った

そんな小さな体でこれだけの雪をどうやって持ってきたのだろうと、彰子は疑問に思ったのだが、物の怪の後ろに勾陣を見つけすぐにそれは解消された

大方、物の怪に助力を請われた勾陣が雪を運んだのだろう

「もっくーん!?」

「何だやるのか!?」

昌浩が立ち上がるのを見て物の怪は数歩後ろに下がった

「行けっ!!」

昌浩は素早く雪玉を作り物の怪に投げ付けたが、惜しくもギリギリの所でかわされた

「おっ、ほっ、よい」

器用にひょいひょいと物の怪は昌浩から繰り出される雪玉をかわしていく。


反撃するために小さな手で四苦八苦しながら玉を作る物の怪を見て、本性に戻ればた易いのに、と少し離れた所で見ていた勾陣は苦笑した
最近物の怪の姿ばかり見ていたせいか、本性を見ると違和感を感じずには居られない。本当に同一人物なのだろうか

「こら、勾!そんな所で見てないで手伝ってくれ!!向こうは彰子が玉を作っているんだぞ」

物の怪に言われ昌浩の方も見ると彰子が雪玉を沢山作り昌浩に渡していた

向こうの連携技で玉が繰り出される早さに付いていけず物の怪は少々バテ気味だ。最初の頃よりも避け方にキレがない

「勾ー!!お願いだ助けてくれ」

「分かったよ」

勾陣は笑いながら雪合戦が繰り広げられる輪の中へと入っていった




雪合戦は昌浩側が勝ち、その後、物の怪が雪転ばしを挑んだのだが、それも勿論昌浩と彰子が圧勝した



楽しい時間ほどあっと言う間に過ぎるもので、いつしか夕日は傾いていた

「うわぁ、もう夕方だよ。そろそろ中に入らないとな」

「楽しくて時間が経つのを忘れてしまったわ」

今までこんな楽しい遊びを知らなかっただなんて、凄く勿体ないことをしていたと思った。小さい頃の私に会いに言って、雪遊びはこんなに楽しいものだよ。って伝えたいぐらい

「本当?それは良かった。また遊ぼうね」

「えぇ」

2人は邸の中へと入っていった







残った物の怪は、雪の上でベチャっと潰れうなだれていた

「何で勝てないんだ...」

その物の怪の言葉を聞いて傍にいた勾陣は吹き出す

「何!?勾まで俺を笑うのか」

「騰蛇よ、お前は今物の怪の姿だろう。体格的にも勝とうとするのは無理があると思うぞ」

「!?そう言えばそうだな」

勾陣に言われ初めて気づいたと言わんばかりに物の怪は飛び跳ねるように起きあがった
その姿がまた勾陣の笑いを誘う

「よし、今度は本性の時に挑もう」

沈み行く夕日に向かって物の怪はそう宣言したのだが、
昌浩相手に本気で雪遊びする紅蓮
それは是非見てみたいと思う勾陣だった


END...?
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