春夏秋冬

□天国と地獄
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「終わった…」

やっと終わった。
頼まれた急ぎの内職

疲れたけどこれは何時もより金が高いから良い

内職を玄関を出た所に出しておく。あとで業者が取りにくるはずだから

フラッと立ちくらみがした

そう言えば3日ぐらい寝てないか…飯も食ってないし
段差に躓いて転けてしまった

駄目だ動く気がしない

力が入らない

死ぬのか……

頭の中でそんな事を考えながら闇に意識が落ちていった







――あぁ、俺死んだんだ


体がフワフワする
体も頭も痛い


―ここは天国なのか…?

生きていた頃、これと言って悪いことをした記憶が無いから天国だと思う

いや、悪魔って天国に行けるのか?

うっすらと目を開ける

自分の家と何ら変わらない普通の天井が見えた

―えらく素朴な天国だな

頭の痛みに悩まされてまた目を閉じる




「やっと目が覚めたか?」

自分の上の方から声が降ってきた

―天使…?

頭の痛みを我慢して目をノロノロと開ける

そこには、一人の男の子が立っていた
色素の薄い髪にハッキリした顔立ち。一般的に美人に入る顔をしている

―天使だ…じゃあここは天国か……

「いつまで寝ているんだ?目が覚めたなら起きろ」

氷のように冷たい声が眠りに落ちかけた意識を呼び戻す

目を凝らして男の子を見る

「秋……」

秋にそっくりだ。これで性格まで似てたらここは地獄だな……

ドス

「ぅわっ!?」

腹部に衝撃があった。
新しい痛みに眠気とさっきまで感じていた痛みが吹っ飛ぶ

「何すんだ!秋…?」

っぽい人……いや、これは…

「何だその疑問系は。今更僕の名前を聞くな」

「秋…」

死んでなかった。けど、ここはある意味地獄かもしれない

「なんで俺ここに?」

「僕が遊びに行ったら、ゼロイチが玄関に倒れてた。悪魔が餓死なんて笑えないね」

笑えないとか言いながら、本人は満面の笑みだ

―しまった。よりにもよってこいつに見つかるとか

「それで、可哀想なゼロイチを僕が此処まで運んだ」

さっきは意識が朦朧として分からなかったが、俺はこの部屋を知ってる。ここは秋の部屋だ

「かれこれ1週間ぐらい看病したかな」

「嘘だろ!?今日何日だ?」

「24日だけど?」

24日…内職の納品したのが23日だから

「1日もたってねぇーじゃないか」

「バレた?」

フフフと秋は少女のように笑う

たとえ1日でも看病してもらったには変わり無い

「迷惑かけたな」

「ううん。全然」

秋にしては殊勝な返事だ

「ねぇいつ遊びに行こうか?ゼロイチの奢りで」

…やっぱりこうなるのか

出来るなら倒れる前に時間を戻して欲しい。こいつに借りを作ると後が面倒臭いから
もう遅いけど

「そうだな…」

おとなしく従っておこう

END

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