疾走少年

□約束
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『約束』

「じい、さま」

「なんじゃ昌浩」

名前を呼ばれ晴明は自分の後ろをついてまわる末の孫を抱きかかえた

その顔は締まりのない、一生懸命歩いて名前を呼んでくれるのが可愛くて可愛くて仕方がないと言った表情をしている

「あのね、まさひろ、おっきくなったらね、じいさまのね、おてつだいするの」

「そうかそうか…それは楽しみじゃな」

「だから…」









「……ま、じい様」

「………」

目を開けると昌浩の姿があった

いつの間にか眠っていたらしい

そう言えば、後ろをついてまわらなくなったのはいつの頃だったかな…

「どうしたのじゃ?」

その言葉を聞いて末の孫は盛大にため息を吐いた

「じい様が俺の事呼んだんだはずなんですが」

「そうだったか?」

「用がないなら部屋に戻ってもいいですか?」

「あぁ、そうだった。昌浩やちょいと頼まれてくれないかの?」

その言葉を聞いて昌浩は眉を僅かに顰めただけで諦めたような表情になった

「今度は何ですか?」

昌浩はあの約束を覚えているだろうか…










「最近晴明の頼みごとをすんなり聞くようになったな」

「そう?」

そう。と物の怪は助走もつけずに昌浩の肩に飛び乗った

「前はあからさまに嫌ーな顔をして、とりあえず話を聞いて、部屋を出る前にグワーっと何かを言い捨てる。みたいな感じだったけど、最近はそれがないよな」

「…そう、かな?」

「なんかあったか?」

「うん…、まぁ…」

言いたくなさそうな昌浩の様子を感じ取って物の怪はそれ以上追求するのはやめた




最近…夢をみた

小さい頃の夢

それで思い出した約束がある

果たしたい、けれど果たされたくない約束




 だから、まさひろがおっきくなって、
 いちにんまえになるまで、
 ぜったいげんきでいてね。
 やくそくだよ。



END
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