疾走少年

□初めて名を呼ばれると言うこと
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立春も過ぎ、まだまだ寒いと感じながらも時折春を感じさせる暖かな日差しが降り注ぐ、そんなある日

京の一角にある安倍邸にドスドスと足音が響いていた



足音の主は安倍成親

この邸に住む安倍吉昌の長子で、もう結婚していてもおかしくない年頃だと言うのに恋人も作らない、陰陽寮では変わり者と噂されている人物である

祖父に希代の大陰陽師である安倍晴明を持つのだが、あの晴明の血、と言うか性格を継いでいるのだから『変わり者』と呼ばれるのも頷ける

それで居て、 寮内では人望が厚く
成親の事を慕っている姫が居るとか居ないとか...



等の本人はそんな事をまったく気にもせず、出仕しなくてもよい今日は、急ぎ足である場所に向かっていた

顔からは楽しいような嬉しいような、そんな表情が見て取れる






「兄上。どちらへ行かれるのですか?」

背後から声をかけられ、振り向くと弟である昌親が不思議そうな顔でこちらを見ていた

「やけに楽しそうな顔をしてますけど...」

「!?俺はそんな顔してたか!??」

成親は顔に手を持っていった
しまった...そんな顔に出してたのか
あの事を考えるとどうしても頬が緩んでしまう

「えぇ。どうしたんですか?」

「いや、何、ちょっと、な」

「そうですか」

成親の慌てっぷりを見ても昌親はそれ以上追求しなかった





昌親も同じ方向に向かっているのか2人は並んで歩き始めた


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