疾走少年

□雪間
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「昌浩、彰子。露樹がお雑煮を━━━・・・」

吉昌は末の息子である昌浩の部屋の戸を開けた所で固まった

これは━━・・・

庭が静かになったから部屋を見に来たら

目の前に広がるのは
昌浩と彰子が仲良く寄り添って眠っている姿

仲が良いとは思っていたが、これは仲が良すぎではないだろうか

「気にするな吉昌」

「....騰蛇殿」

物の怪が外からトテトテと昌浩と彰子の傍までやってきた
勾陣にでも拭いて貰ったのか濡れていた毛皮はすっかり乾いている

「こいつらは、」

物の怪は意味ありげな笑みを浮かべて昌浩の頭をペシッと叩く

「夫婦みたいなものだ」

そう言い放つ物の怪に吉昌は苦笑した

「・・・いや、それもそれで問題があるのですが」

遅かれ早かれ
そう言う関係になるなら、やはり一度、道長様にお伝えするべきなのだろうか

「で、そんな事よりどうしたんだ?」

下手をしたら一族の存亡に関わる出来事を物の怪は「そんな事」の一言で終わらせてしまった

まぁ別に陰陽寮をクビになっても仕事は来るだろうから生活に窮することはないだろう
家族が幸せに暮らせれば良いのだから

「露樹がお雑煮を作ったから一緒に戴こうかと思ったのですが」

吉昌はチラッと眠っている二人に目をやる
相変わらず静かな寝息を立てていた

「もう半刻もしない内に勝手に目を覚ますだろう」

「そうですか。では、二人が起きたらお雑煮があることを伝えて貰えますか?」

「分かった」

「ではお願いします」

そうして吉昌は静かに戸を閉め母屋の方に帰っていった


「俺も一眠りするかな」

吉昌を見送ったあと、物の怪は伸びをして二人の傍で丸くなった

END
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