疾走少年

□雪まろげ
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「彰子雪遊びしよう!!」

昨日の昼に降った雪は短時間であったにも関わらず階の2段目を隠すぐらいまで降り積もった

今まで、そんなに雪がたくさん積もっているのを見て綺麗だな。と思うことはあっても雪で遊ぼうと思うことはなかった

小さい頃に一度雑色の子供が雪で遊んでいるのを見て仲間に入れて貰った事があったが、すぐに女房に見つかり叱られ、結局は暖かい部屋で遊んでいるのを眺めているだけだった。
その頃に雪は遊ぶ物では無く観る物、そう意識付けられていたのかも知れない

だから、昌浩に『雪遊びをしよう』と言われた時、すぐに反応できなかった

「雪で遊ぶの?」

彰子は首を傾げた。長い黒髪が肩からこぼれる

「え?雪って言えば庭で遊ぶものじゃないの?」

「私が東三条殿に居た時は、雪に触れる事はあったけど観る物だったわ」

昌浩は彰子の言葉を聞いて驚いた
自分は雪が積もると必ずと言って良いほど庭で遊んでいた。兄達が邸を出る前の時も雪が積もる度に遊んで貰ったいた記憶がある

庭で雪遊び。藤原家のような格式高い家ではそうも行かないのだろうか。もしそうなら大貴族も結構大変なんだなぁ...

「とにかく、折角雪が積もってるんだから遊ぼう!」

「何するの?」

「えーっと...言うより実践した方が早いや。いっぱい着込んで早く外に行こう」

昌浩の格好を見るといつも以上に着込んでいた

「昌浩そんなに急かさなくても雪は逃げないぞ」

昌浩の足下で物の怪がため息を吐く
物の怪の言うとおり昌浩は部屋に来た時からそわそわと落ち着きがない

「雪は逃げないけど、今日はいい天気だから溶けるかもしれないよ」

今日は昨日と打って変わって冬半ばにしては暖かい日だった
そんな一日で溶けるわけ無いだろ。と物の怪は突っ込む

「雪は多い方が良いから。ね、彰子行こう」




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