輪廻の火
□帰還
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「僕の死ぬ時までは……視れる」
その言葉と共に一瞬目を伏せ、すぐに何事もなかったように、よいしょとシルヴィスの体を動かした。
「明日、朝食の時間に起こしてあげるよ」
また、前の話がなかったように明るく告げられた。
無意識にも見えたが、わざと話題を切り替えたようにも感じられた。
だが、いずれにしてもシルヴィスが認識出来たのはそこまでだった。
続くザナックの言葉は、頭を掠めていく。
「僕が死ぬ、その時までは……キミを護るから……」
その言葉の意味を問いたいのに、意思に反して意識は暗転した。
窓もなく、時の流れを知る術のないフィンディアの一室で、これまでになく深い眠りに落ちていった。
昏き道に灯明を
流されぬよう高みに
吹かれぬよう覆いを
精霊よ 護りたまえ
其は最後の希望
我らの往く道を
照らし続けるよう…
精霊よ 護りたまえ
眠る耳に、詩のような祈りが流れていった。