輪廻の火

□帰還
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「自由…」
「そう。だから安心して休んで?」

噛みしめるように呟いたシルヴィスの額に、ザナックの手が軽く触れた。

それは優しい、熱を測るような触れ方だったが、シルヴィスの全身から力が抜けた。
体内に湧き上がる炎も瞬時に消えた。

途端に、これまで辛うじて保っていた姿勢が崩れる。

(え…?)

ベッドに倒れたシルヴィスは、声も出せなかった。

「君の疑問に答えておこうか」

満面の笑みでシルヴィスを見て、ザナックが言った。

「君がここに来る事はわかっていたよ」

自分に言われてる事はわかるのに、どこか遠くで喋られてる感覚だった。
次第に意識に霞がかかっていく。

「僕は過去も、未来も、時間を越えて出来事を視る事が出来るから。過去に起きた事も、これから起き得る全ても、知る事が出来るんだ」

言いながら、シルヴィスの体がベッドに真っ直ぐになるように動かしていく。
力の入らない体は、手足だけでも重そうだ。

それでなくても、ザナックとシルヴィスでは体格が違う。
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