頂き物書庫

□見張り番
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「お疲れさん、差し入れ」
 前触れもなく空間を歪めて、隣の家の庭から顔を出したように声を掛けてきたのは、長年の友人。
 髪の毛から着るものから全部真っ黒で、目つきも悪くて性格も悪くてガラも悪い。
 でも、気の置けない心からの友。
「珍しいな、あんたが差し入れするの」
「まあ、気の迷いだな。それと、教えておいてやろうと」
 俺が1人でこの場所にいるようになってからは、彼ぐらいしかこの場所には来ない。というか、来ることができない。
 ここは捩れた次元だから、迂闊に踏み込むと出られなくなってしまう。
「何を?」
「お前の後継者、見つかったらしい」
「へえ」
 差し入れに持ってきたのがファーストフードのバーガーとシェイクっていうのは……彼なりに気をつかったんだろうか?確かにここ数年口にしてなかったけど。
 魚のフライの入ったバーガーを頬張って、無表情に近い顔を見ると、彼は俺が見張り続けている“あれ”を見ていた。
「お前さんと同じで、超能力持ちの異端児だ。聞いた話だと、桜の木の下には遺体が埋まってるって、マジで信じているらしい」
「……ガキ?」
「いや、一応社会人やってる。“あれ”に対抗する力があるのか、これからわかるんだろうが……」
「あんたはどう見た?」
 黒い瞳が伏せられ、唇が笑みの形に引き上げられた。
「お前によく似ている。黒髪のくせに色を抜いて茶にしていたり、寂しがりのくせに突っ張っていたり」
「寂しがりは余計」
「どうだか……。そして、本人もわかっていないほどの超能力」
 そうか。
 お前がそう見るなら、きっとそいつが俺の待つ人物なのかも知れない。
 いずれ、1人じゃなくなるってことだな。
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