贈り物

□マ王代行閣下の一日
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 麗らかな陽光の差し込む部屋で、彼は苛立ちを抑えようとしていた。

(まったく、ギュンターもコンラートも甘過ぎる)
 口からは長い溜め息が零れた。

 魔王に続き、大賢者までもがあちらの住人だったとわかってからというもの、何かとあちらの真似をしたがる者も出ているようだった。

 彼の弟も然り。
「兄上、あちらでは恋人へチョコを贈る風習があるとの事なのですが、ビターチョコとスイートチョコではどちらの方が良いと思われますか?」
 唐突に部屋に入って来たかと思えば、何やらお菓子作りの本を片手に質問してきた。

 周りの様子を伺うという事をしないつもりらしい。目線は本にだけ注がれている。
「…あげる本人に聞いたらどうだ」

「それでは驚かせられないではありませんか。ちなみにコンラートはミルクチョコ、ギュンターはビタースイートだと言うのですが」
 どうやら彼はここへ来る前に、既に意見を聞いて回ってるようだ。

「……スイートにしておけ」

 長い長い溜め息を吐いて、そう答えた。
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