贈り物

□これからもマ王
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 水の中から顔を出せば、そこは見覚えのある中庭だった。
「眞王廟…だよな?」
「うん。迎えもすぐ来ると思うよ」
 村田が言い終わるが早いか、入口の方から悲鳴に近い叫びが聞こえてきた。
「へぇぇぇぇいぃぃぃぃかぁぁぁぁー!!」
「…ね?」
 苦笑しながら立ち上がった村田に続いて、俺も立ち上がる。
 と同時に駆け寄って来た人物に飛び付かれた。
「あぁ陛下。このギュンター、お帰りになられる時を心待ちに致しておりました」
「心待ちに…って、何かあったのか?」
 嫌な予感がして真顔になる。けどギュンターは微笑んで、首を横に振った。だいぶ慣れたけど、やっぱ綺麗な顔してるよなー。
「いいえ、ご心配されるような事はございませんよ。私は一日だとて、陛下のお側から離れたくないのですよ。さ、お二人共、血盟城へ参りましょう」
 そう言って、ギュンターは俺と村田を促した。


 血盟城にはコンラッドやヴォルフラム達が揃っていた。もしかして、俺達を待ってた?
「お帰りなさい、陛下」
「どこをほっつき歩いていた?! まったく、お前はふらふらし過ぎだぞ」
 この二人に会うと、なんだかほっとするな。眞魔国に帰って来たんだって感じがするからかもな。
「ただいまコンラッド、ヴォルフラム、グウェンダル」
 声は掛からなかったけど、あんたもちゃんと迎えに出て来てくれたんだな。なんか嬉しいぜ。
「連絡した準備って出来てる?」
 ちょっとした感動に浸っている俺を横目に、ムラケンがグウェンダルに聞いた。グウェンダルは、小さく「ああ」と頷いた。
 ムラケン、準備って?
「行けばわかるよ、渋谷。楽しみだな〜」
 質問を軽くスルーして、村田は一人先に城の中に入って行ってしまった。
「何をボケッとしている? 僕らも行くぞ」
 ヴォルフラムに背を叩かれ城に入ると、次々にみんなが顔を見せてくれた。けど、なんか忙しそう? 右隣にいるコンラッドに聞いてみた。
「なあ、コンラッド。みんな随分忙しそうだけど、何かあったのか?」
「何もありませんよ、陛下」
「…おい」
「ほんとか〜? っていうか陛下って呼ぶなよな、名付け親」
「すみません。それよりユーリ。あちらで変わった事は?」
「ないよ。俺も村田も変わりなし」
「おい、ユーリっ」
 左隣を歩いていたヴォルフラムが、勢いよく肩を掴んできた。
「んあ? なんだよ、ヴォルフラム。やっぱり何かあったのか?」
「そうじゃない。僕がいるのに、何故コンラートに聞くんだ。僕は婚約者だぞ?」
「いや、それはさ、コンラッドの方が答えてくれそうっていうか、お前じゃ『お前には関係ない』とか言われそうっていうか」
 なんでって聞かれてもなぁ、と目を逸らす。
「目を逸らすなぁ!」
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