贈り物

□見張り番
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「お前さんと同じで、超能力持ちの異端児だ。聞いた話だと、桜の木の下には遺体が埋まってるって、マジで信じているらしい」
「……ガキ?」
「いや、一応社会人やってる。“あれ”に対抗する力があるのか、これからわかるんだろうが……」
「あんたはどう見た?」
 俺の説明を聞いた伊織は、予想通りの質問をした。
 俺は見てきた後継者を思い出し、瞳を伏せた。
 彼は笑えるほどに伊織と似ていた。
 つい声に出して笑いそうになったが、それは抑え、口の端に乗せるに留める。
「お前によく似ている。黒髪のくせに色を抜いて茶にしていたり、寂しがりのくせに突っ張っていたり」
「寂しがりは余計」
「どうだか……。そして、本人もわかっていないほどの超能力」
 若干ふてくされた表情での突っ込みは、軽く肩をすくめて流す。
 自覚してても認めない奴だとわかってる。

 しばらく“あれ”を見てから、伊織の肩を叩いた。
「毎日見張ってなくてもいいんだろう? たまには本部に顔を出せ」
「何? あんたが寂しい?」
「バカ言え。……“あれ”が本格的に動き出すまで、まだ時はあるだろう。会いたがってるヤツは多い」
 それだけ言って、俺はそこを去った。
 伝えるべき事は伝えた。後どうするかは伊織次第。
「……またな」
 伊織のいる空間へ向けて言葉を送る。
 きっとまた何も言わずに去ったと、文句を言っているだろう。
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