贈り物
□見張り番
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一人で仕事をしているあいつに会いに行こうと思ったのは、見つけたと聞いたから。
手土産にファーストフードのバーガーとシェイクを買ったのは、いつも手ぶらな俺に文句を言ってくるから。
―ただ、それだけ。
「お疲れさん、差し入れ」
ノックもせず部屋に入るようにして、あいつの―伊織のいる空間へと入る。
並の能力者では入ることも出来ないねじれた次元。
会いに来るのは俺くらいだと伊織は言っていた。
「珍しいな、あんたが差し入れするの」
「まあ、気の迷いだな。それと、教えておいてやろうと」
特殊な能力を持つが故に孤独であった伊織。
目つきの悪さも、態度の悪さも、印象の悪さに拍車をかける。
ほんの少しの共感と興味から始まった関わりは、いつしか掛け替えのない友情で結ばれていた。
「何を?」
「お前の後継者、見つかったらしい」
言って、伊織が見張り続けている“あれ”に目をやる。
今の俺達では、動き出さないように見張ることしか出来ない“あれ”。
見つかった人物が真に後継者なら、伊織と力を合わせる事で消滅させることが出来るはずだが…。
「へえ」
返事に続いてバーガーを頬張る音がした。