輪廻の火

□帰還
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 ―過ぎた精霊の力に弾かれて人間界に渡った僕が見たのは、自分を忌む母親を守ろうと、投げられる石を弾き、大人をも威圧する気迫で叫ぶキミ。

『やめろ! 母さんは何も悪くない!』

僕の目に映ったキミは強く、そして哀しんでいた。
親に忌み嫌われる自分の存在に、疑問を覚えていた。


だけど、僕に気付いたキミはとても優しかった。


『どうしたんだ? 迷子か? 親が心配するから帰った方が良いぞ。…送ろうか?』


僕はなんて言っていいかわからなくて、ただ首を横に振っていた。

だって、迷子だった訳じゃない。
送ってもらえる筈がない。

それに、親が心配するとしたら、それは僕自身を想ってじゃない。
僕の力がなくなると困るから。

「大丈夫。一人で帰れるよ」

笑顔でそう答え、近くの森へと駆け込んだ。

 ―僕は、初めて僕自身を見てくれたキミを忘れない。
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