贈り物
□これからもマ王
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「渋谷ー。まだ怒ってたりする?」
ムラケンこと村田健がそう聞いてきたのは、夏の終わりも近いある日の事。
「怒って? …なんで?」
意味がわからず瞬きを繰り返し、手にした棒アイスを頬張る。残暑に溶け始めているアイスがウマイ。
「…怒ってないなら良いんだ。気にしないで。それより渋谷」
「んあ?」
少し改まった声に振り向くと、ムラケンの眼鏡が光った。って村田、近い、近い!
「ちょっと付き合ってよ」
何故か朝と同じ言葉を言うと、俺にしがみつく格好で倒れてきた。
どうせなら可愛い女の子に言われたいぞー、その言葉。っていうか後ろ、川なんですけど?! しかもここ、浅いんじゃなかったか?! ちょっと待て村田ー! 勢いよく背中から浅い川へ落ちたりしたら、シャレにならないって!
「大丈夫。痛くないよ」
確かに大きな衝撃は来なかったが、代わりに周りの水が渦巻いて、俺達を引き込んで行く。後はお馴染みのスターツアーズだ。
それ自体はもう驚かないけど、ムラケン…押し倒す前に言えよなー。