≪とある世界の真空領域≫
□第五章
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辺りが一気に静まり返った。
そして《スキルアウト》の前に立ちはだかった人間を見て、周りの人間が息を呑むのがわかった。
それもそのはず。
《スキルアウト》の前に立ちはだかったのは──
小学校三〜四年生くらいの、幼い少女だったからだ。
「ちゃんとお金払わないと……」
少女は震える声で言う。
それを聞いて、《スキルアウト》達は馬鹿にしたように笑う。
そして、ジャマなんだよ と少女を突き飛ばした。
ガシャン!と音を立てて、品物を陳列している棚にぶつかった。
少女の短い悲鳴が店内に響き渡った。
それを助けようとする者はいない。
それどころか、無視していればいいのに という空気が流れた。
篠坂も実際そう思っていた。
自分に関係の無いコトは、無視して生きる。
それが一番賢い生き方だと、理解していた。
だけど、
気づけば篠坂は《スキルアウト》達の前に飛び出していた。
「有り得ねーな」
その言葉に少女が顔を上げた。
《スキルアウト》達は、小さな子供に行く手を遮られて苛立っているのか、手にしていた金属バットを振り回した。
しかし、その数秒後──
カランッ…カラン……
次々と、《スキルアウト》達は手に持っていた物を落としてゆく。
《スキルアウト》達の顔には苦悶の表情が浮かんでいた。
さらに数秒後、苦しそうに喉を押さえて転げ回る。
やがて、白目を剥き、動かなくなった《スキルアウト》達を見て、
「俺がこんなこと選ぶなんざ」
篠坂は皮肉気にそう言った。