≪とある世界の真空領域≫
□第四章
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月曜日の朝。
篠坂は、自分のクラスの妙な雰囲気(発しているのは主に男子生徒)に首を傾げた。
すると、
「にゃー。いいにゃーシノやんのクラスは」
教室の入口から猫ボイスが飛んできた。
「土御門…」
視線を向けるとそこには、短い金髪にアロハシャツ、青いサングラスをかけた少年──土御門元春。
「そんな心の底から嫌そーな顔されると、傷つくぜよ」
「つーか、何が‘イイ’って?」
笑いながら言う土御門を無視して、篠坂は尋ねた。
「何って、このクラスに時期はずれの転校生(女の子)が来るんじゃないのかにゃー?」
きっと、ワケアリ美少女だにゃー と続けた土御門を見た後、
「それでみんな浮足立ってんのか…」
クラスメートを見回して、納得する。
すると不意に、土御門が、そういえば と切り出す。
「最近シノやんの周りでなんかなかったかにゃー?」
「……答えたら何かくれるのか?」
篠坂が尋ね返すと、土御門は時計を見て、
「…もうすぐホームルームが始まるにゃー」
そう言って土御門は、自分の教室に帰って行った。
(聞きたいコトがあるなら、素直に聞きゃーいーのによ…)
その後ろ姿を眺めながら篠坂はそう思った。