≪とある世界の真空領域≫
□第八章
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「ハッ……ハッ………」
暗い闇の中を少年は走っていた。
有り得ない。
少年の頭にはその言葉しか浮かばなかった。
どれだけ走っても、
脳裏を過ぎる人間が消えない。
無我夢中で走る少年が路地を曲がろうとした瞬間────
その人間は舞い降りてきた。
「ヒッ!?」
少年は喉の奥を引き攣らせたような悲鳴を上げる。
わからない。
何故目の前にこんな人間がいるのか、
そもそも、目の前の生物は人間なのかもわからない。
その生物がこちらに視線を向ける。
少年は声を発することどころか、瞬きをすることさえできなかった。
瞬きをすれば、その瞬間に首と胴体が離れ離れになってもおかしくない。
そう少年が思うのも無理はなかった。
だって、目の前にいる生物は、
(学園都市…最強の……)
白濁し白熱し白狂したような純白の《レベル5》なのだから。