番外編

always say…
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…―――リンゴーン…リンゴーン…



教会の鐘が3時を告げる音が、窓から聞こえる。

私は気分を高揚させながら、口を開く。


「あら、おやつの時間だわ。」


そんな私の口癖を、口にしたのは私ではなかった。

私によく似た、違う声。

出番を取られた私の口は開いたまま。

そんな私を見て、後ろからクスクスと笑い声がした。


「レン!」


私がその名を呼んで振り返れば、私の片割れが目を細めて笑っていた。


「何なの今の…?」

「いや、だってリンがいつも嬉しそうに言うから、覚えちゃったよ。」


未だクスクス笑うレンの言葉に、私は目を丸くする。

自分では口癖だとは思ってなかったから、改めてそう言われると何だか悔しい。


「なーに?まるで私が食いしん坊みたいな言い方ね!!」

「そんな事、言ってないよ。」


剥れながらそう言えば、困ったみたいに眉を下げて笑う。

本当にレンは私を子供扱いするんだから。

それが少し気に食わなくて、私は眉を寄せると脈絡もなく突っ掛かる。


「レンは私の真似が好きなのね?」

「えっ?」


何だか子供の様な自分の言葉。
だけどそれにレンは、不思議そうな顔をする。

後に引けなくなった私は、そのまま言葉を続けた。


「さっきのもそうだけど、髪型だって真似してるわ!」


私に言われて、レンは目を丸くすると後ろに縛った自分の髪を見る。

私と同じ肩までの髪は、男性にしては中途半端な長さ。

長髪か短髪かが支流だもの。


「伸びてもすぐ私と同じ長さにするでしょ!」

「確かにそうだね。」


レン自身もそれに気付いて、驚いてる様に見えた。

私は何となく勝ち誇った気になって、顎を上げる。


「ほら!真似してる!」


そんな私の一言に、レンはまたクスクス笑った。


「本当だ!僕、リンの真似してたみたいだね。」


その反応は、あまり期待通りではない。

けど、そんな事を言い続けるのも、馬鹿らしくも思えて来た。

なので私は一息吐き出すと、気分を入れ替えた。


「でもレンが本気で私の真似をしたら、誰も分からないでしょうね。」


少し悪戯に言う私の一言に、レンは目を細める。


「そうだね。だって僕らは双子だからね。」


その言葉は何とも心地好くて、私は気付けば口元が上がっていた。


「小さな頃に一緒にいたら、入れ替わって遊んだりしてたかもしれないわよね!」


私達には、有り得ない過去の光景を思い浮かべる。


「そうだね。きっとみんなどちらか解らなくて混乱するだろうね。」


レンも私に続いて、そんな過去の話をする。

それは幼い頃を、共に過ごす事を許されなかった私達の小さな抵抗。

それは苦しい事など何もない、お伽噺の様な空想。

だけどそんな話しすらも、私達には楽しくて仕方なかった。

埋められない空白の時間を、こんな風にして私達は埋めるしか術を持たないから。


「きっとリンは僕のフリして、2つ目のおやつを食べるんだよ。」

「もーまたレンはそうやって…あっ!」


レンの言葉に私はまた剥れながら、気付いた様に手を口に当てる。

私のその行動で、レンは察したのかクスリと笑う。


「さぁ、リン様。おやつの時間ですよ?」


そう言って、差し出された手を私も小さく笑いながら取る。


「えぇ、行きましょう。」


そうやって私達はまた、今の時間に戻っていく。



私は王女。あなたは召使。

それはあなたが選んだ道。

それでも、やっぱりたまに思うの。

双子らしくいれないのかと。


だからこそ…きっと私は、
空想を口にする。

あなたの中にある、
私に似た部分を探す。

真似ていたっていい…
双子だという証拠を…。



そう、私は解ってなかったの。

あなたがどんな気持ちで、
私を真似ていたのか。

どんな気持ちで、
この道を選んだのか。



そして私は最後まで、
それに気付く事が
出来ないという事も。



今はただ2人の時間に、
何回もの鐘が鳴り響く日を
噛み締めるだけ…。


終わりの鐘が鳴り響く、
その日まで…―――




〜fin〜



**********************


**あとがき**


●初めて《悪ノ》拍手文にのせました。

この話しはもうずっと書きたくて、書きたくて、書きたくて、書きたくて(ry

本編に入れるよりもこんな風に、番外編で書きたかったので思いきって拍手文に!

時系列としては、出会って3ヶ月後くらい〜今にかけて。

それは皆さんのご想像にお任せします(^-^)

『DarK in the YELLOW.』も佳境を迎えております。

こんな二人のやり取りがあったのか…と、思いながら次の第21話を読んで頂きたいです。


最後になりましたが、拍手ありがとうございました(*^_^*)

2011.2.6


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