Twins Butterfly

□scene*B -Len-
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        up 2010.6.19



『今から合唱部の買い出しで、ルキくんとネルとお買い物!!』


放課後の何気ないリンからのメール。

本当に毎日欠かさずにしてくるメールを見ると、いつも自然に口元が緩む。


『そっか。はぐれんなよな。』


それにいつも通りに返事をすると、間髪入れずに携帯が震える。


『ひどぉい!!ルキくんにも同じ事言われた!!
リンってそんなに子供!?』


さすがルキ。よく解ってる。

ルキはオレとリンの幼なじみで、今は中3。

オレ達よりひとつ上。

リンの事をよく解っててくれてるので、ルキがいてくれて安心してる。


『はいはい。子供じゃないよ。』


送られたメールに、頬を膨らめてる姿が想像出来て、面白い。


『来週はママの誕生日だね!!』


毎日カウントダウンみたく入れて来る文章から、心待ちにしてるのが伺えた。

後少しで会えるね。

って、言われてる気がして、それをどこかで喜ぶ自分がいる。


喜んで…すぐに自己嫌悪になる。

窓から射し込む西日は、前より強くなって目が眩む。

吹き込む風は少しぬるくなって、学ランだと熱いくらいだ。


季節は変わっていく。

それなのに相変わらず、想いは変わらない。

どうする事も出来ない気持ちの、心の置き所がオレには解らない。

携帯を閉じると、堅く握り締める。


「レン!!部活行くぞ!!」


体操着に着替え終わったミクオが、呼ぶ声がする。


「今、行く!」


返事をすると、席を立った。





体育館にはボールが跳ねる音と、シューズの擦れる音が鳴り響く。


「レン決めろ!」


ミクオからパスされたボールを受け取ると、オレはドリブルしてから両手を上げて跳ね上がる。

手から飛び出したボールが、弧を描いてネットへと入る。


「ナイスシュート!!」


ネットからボールが落ちる音に続いて、高く綺麗な声が体育館に響き渡った。

思わず全員がその方向へ顔を向ける。

体育館の脇の開けられた扉には、男子校のここでは滅多に見ない、セーラー服姿の女生徒が立っていた。

長い髪を両脇で二つに結った、可愛らしい笑顔のその人をみんな良く知っている。


「ミクせんぱーい!!」


ミクオが誰より先に、意気揚々と歓喜の声を上げて彼女に近付くと、他の部員達もそれに続く。


「みんなお疲れ様ぁ。」



ミク先輩は去年まで隣の女子校に通っていて、今は付属の高校に通っている。

姉妹校の女子校のバスケ部とここは、関わりが強い。

キャプテンをしてい先輩は、こうしてたまに顔を出した。

整った顔に、可愛らしい笑顔、綺麗な長い髪。

どれをとっても文句のつけようもないミク先輩は、この男子校の言うなればマドンナ的存在だ。



「レンくんお疲れ様。」


みんなに続く事なく、顔だけそちらへ向けていたオレに目を向けて、ミク先輩は目を細めて笑った。


「あっ、どうも…。」


オレは軽く頭を下げて、それに答える。


「レン!お前はどうしてそー愛想がねーんだよ!!」


そんなオレの態度に、ミクオが指をさしてがなりつける。


「はぁ?別に普通だろ!?」


ため息混じりに呆れた声を出せば、ミクオは拳を握り締めてワナワナと震え出す。

コイツはミク先輩が絡むと、より面倒くさくなる。


「あはは!大丈夫だよ、クオくん。
レンくんの事はよく分かってるから。」


ミクオの肩に手を置いて宥めると、先輩はオレに目を流す。

それにどう返していいか分からなくて、オレは何も答えなかった。





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