夢小説 DRAGON BALL


初恋テレパシー
1ページ/4ページ





初恋テレパシー





とあるひとりの少女______その名はフルート。______が、 いた。

甘いお菓子が大好きで、 おもちゃ(主にぬいぐるみや人形だ。)と遊ぶことが大好きな
小さな小さな、 まだまだ幼い少女。

そんな幼い少女が憧れを抱いている、 ひそかなひとつの夢。




「おとなになったら花嫁さんになりたい!」




きっかけは両親に連れられて参加した結婚式だった。
幼いフルートが初めて目にした花嫁の姿は、 まぶしいくらいに美しく見えた。
真っ白なドレスは晴れた空の下でフラワーシャワーのなか、 光輝いていたし
花婿と寄り添う姿は幼い心にも印象的で、 幸せそうだった。
Just married!と書かれたエアカーに乗ったふたりを
フルートは目を輝かせて見送っていた。
小さくなって、 見えなくなっても、 ずっと______。

小さな胸のなかに夢が芽生えた瞬間だ。

フルートは、 ゆっくりと目を閉じた
いつかの未来、 大人になったとき。 真っ白なあのドレスを着た自分を思い浮かべて。
その隣には、 まだ見ぬ素敵な彼がいて______

ウェディングドレスを着た自分の姿は鮮明に思い浮かべることができたけれど
隣にいる花婿の顔や姿は、 まだぼやけていて不鮮明。
それもそのはず。
“結婚するべき相手”と、 フルートはまだ出会っていないのだから・・・・・・。




「フルート。 さあ、 そろそろ帰るぞ」




うっとりと夢心地のフルートの隣に立った父親は、 フルートの肩に手を乗せた。
父親と母親のあいだに立って、 両親と手をつなぎながら
フルートは、 そっとふり返る。
尖った三角屋根のチャペルを最後にひと目見て。
ウェディングベルがまだ鳴り響いてる気がした。



だけど、 そんな風に幸せで包まれた平和な街に突然の悲劇が襲いかかった。

くり返し起こる爆発音。 逃げ惑う人々。




「ママッ! ママぁーッ! どこ行っちゃったの!?」




母娘ふたり。 街での買い物中に起こった事件。
フルートは、 ふわふわと揺れる緑色の風船を手にしたまま
必死に周囲を見渡す。
それでも母親の姿は見つからない。
大人たちは必死にあっちへこっちへと逃げまわっている。
いざとなると我が身を守ることだけに必死で、 小さな子どもには目もくれないのだ。
所詮、 大人や他人(人間)なんてものは。




「ママぁ・・・・どこぉ・・・・?」




不安と恐怖に押しつぶされそうになったフルートの声は掠れ、
つぶらな瞳には涙が浮かぶ。


二メートルを超える身長。 黄緑色の肌のナメック星人である彼は、 
白いマントをはためかせ空を飛ぶ。
目下に広がる荒れ果てた街を見下ろして。
敵の残した爪痕のようだと思いながら。
その尖った耳に、 街の人々の悲鳴が響いてくる。

ナメック星人の彼______ピッコロは、 その荒れ果てた街へと着地した。

エアカーやバイクが猛スピードでピッコロのそばを横切って行く。
大荷物を抱えてばたばたと走る人々も。
ピッコロは、 そんな彼らを横目で見やり
敵の”気”を感じ取ろうと神経を研ぎ澄ます。




「・・・・・・・・」




どうやら、 その”気”は徐々に遠ざかっているようだ。
この街を通過地点としたらしい。
もっと先へと飛ぼうとした瞬間______ふわふわ揺れる緑色の風船が視界に飛びこんできた。
それを手にするひとりの少女と共に。

少女は涙ぐんでいた。
時おり周囲を見渡しては、 絶望したように俯く。




「ママぁ・・・・」

「・・・・・・・・」




嗚咽を漏らす小さな肩が震えている。
ピッコロは、 そのまま通り過ぎる気でいた。
たかだか地球人のひとりやふたり。 気に留めるまでもないと。




「ママ・・・・?」




少女は数メートル先に立つピッコロの気配に気づいたのか、 ゆっくりと顔を上げた。
だけど、 目の前に立つ相手を目にした瞬間
その瞳は別の意味での驚きの色に染まるのだった。

フルートからしてみれば、 とてつもなく奇妙な格好に見えたし
______頭に巻かれたターバン、 白いマント、 それを包みこむような紫色の道着。______
黄緑色の肌に尖った耳・・・・人間ではないと一目瞭然。
この地球で生まれ育ったからこそ、 ナメック星人を目にしたのは初めてだった。

だけど不思議なことにフルートは恐怖を感じなかった。
興味深そうにピッコロを見つめる。
涙は既に引っこみつつあった。




「・・・・危ないっ!」

「え?」




ピッコロはフルートに向かって声を張り上げた。
フルートの頭上にある巨大な看板のネジが砕け、 落下してきたのだ。
フルートが見上げるより先にピッコロが飛び立ち
フルートを両腕でしっかりと抱き抱えた。

爆発音に近い音をたて、 もくもくと煙のような砂埃をたてながら
巨大な看板は地面へと叩きつけられるように落下した。




「・・・・・・・・」




フルートはその光景をピッコロの腕のなかで茫然と眺めた。
全身の力がへなへなと抜けてしまった瞬間
手にしていた風船がなくなっていることに気づく。




「おまえ、 大丈夫か?
・・・・ったく。 ぼうっとしてるからだ。 怪我は・・・・ないようだな」

「・・・・風船」

「あ?」

「風船・・・・びっくりして・・・・飛ばしちゃった」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ