ツインソウル



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6 ズタズタ




唇を引き結んだままのドラコは自室のドアを乱暴に閉めると鍵をかけ、 
クラッブとゴイルが床に散らかしたままのキャンディーやチョコレートの包み、 スナック菓子の袋、 
それらを蹴飛ばすようにかき分けて進みながら、 自分のベッドへと辿り着き
その上で胡坐をかいて座った。 絡めた足の上で頬杖をついて。

絶望の淵に追い詰められたような顔をしていたマリコのことが
脳裏に、 瞼の裏に、 焼きついて離れない________。




「ああする他にどうしろって言うんだよ・・・・・・」




弱々しくこぼれ落ちたひとりごと。
頬杖をついていた手をふり上げた拳にして、 膝をがつんと叩く。

間違いなくマリコを悲しませた。 傷つけた。

ずっとずっと好きで好きで、 恋焦がれていると言うのに________。

だからこそ、 だ。

よりによって思いつづけていた自分ではなく、 
心底憎く思っている男と恋に落ちてしまうなんて・・・・・・
それを見てみぬふりをするだなんて・・・・・・拷問だ。
永遠につづく呪いの呪文でもかけられたような拷問。
それか
親指だけ縛られて天井から吊るされる、 
体が上半身と下半身の真っ二つに引きちぎられそうな拷問だ。

このままマリコがポッターなんかと恋に落ちていたならば、
そんな拷問のような日々が果てしなくつづくのだ________。

ドラコはそう考えるだけで鳥肌が立った。 動悸もひどく、
指先がぞわぞわとして、 それが電流のように全身を駆け走る。
そんなことにはとても耐えられるわけがない。

そう、 だからこれでよかったのだ。
こうするしかなかったのだ。

そんな考えで自分を奮い立たせるしか術はなかった。
自分と付き合うか、 ハリー・ ポッターと今後一切の関わりを絶つか
究極の二択を叩きつけた瞬間、 自分と付き合うことを拒まれ
それだけでも充分ドラコの心には大きな亀裂が入っていたからこそ。
もう、 ズタズタに。







マリコとのキスはハリーにとって、 どんな魔法や薬よりも効果のあるものだった。
体調は完璧完全に回復。
再びマリコと会い、 他愛ないことを語り合える瞬間が楽しみでたまらなかった。
その瞬間を待ち焦がれ、 待ち焦がれすぎて、 もう、 
今度は違った意味で失神を起こしてしまいそうだ。

そうなるとグリフィンドールとスリザリンと言う互いの寮が違うこと、 
本来であれば敵対する立場にあると言うことを呪いたくなる。

何度かスリザリンとの合同授業があってマリコと顔を合わせる機会はあったものの、
常にその隣にはぴったりとドラコがついていた。
教室へ向かうとき、 授業中、 授業終了後に寮へと帰るときと。
こんなことは今にはじまったことではないかとハリーは自分に言い聞かせるも、
妙な焦りや不安や苛立ちは少しずつ募っていた。

朝昼晩の大広間での食事も、 ドラコはマリコの隣にぴったりとついていた。
挙句の果てには休み時間もだ。
たまたま廊下でマリコを見かけて声をかけようとするも、 
やっぱり隣にはドラコが________・・・・

相変わらずだ。 でもあいつは元々ああだった。

気持ちがへし折れそうになるたび、 そう自分に言い聞かせる。

でも、 そろそろ限界だった。
何故だか胸騒ぎが起こった。
何故かと言うと、

ハナムラは、 一度も僕を見ようとしない。
僕がどんなに見つめようとも、 目すら合わせてくれない________・・・・。

ハリーは、 いてもたってもいられなくなった。
行動を起こしたのは夜。
夕食の後、 談話室でハーマイオニーとロンと三人でスネイプのだした課題を広げていたとき。
ハーマイオニーはすらすらとペンを走らせ、
ロンはペンすら握ることを止めて、 テーブルに顎だけ乗せてまっさらなままの羊皮紙と
開いたままの教科書を睨んでいたときだ。

ハリーは羊皮紙に落書きをしていた。
ハーマイオニーとロンの意識と視線が完全に自分に向いてないと察知した瞬間
マリコに宛てる手紙を書いたのだ。
とてつもなく短い、 たったひとことだけの手紙。

何て書こうかはさんざん悩み、 考えた。
課題なんかそっちの気で。

好きだよ、 愛してる。
なんて書ける勇気は持ち合わせていないから却下。

今度、 近いうちにふたりでどこかで会おう。
これにしようと決めた。
でも、 いざペンを握ると照れ臭さが邪魔して書けなかった。
むしろ好きな相手へ手紙を書くなんて初めてのことだからこそ
手紙そのものが照れ臭い。
それでも何かを言葉にしてマリコに伝えたくてたまらなかった。

やあ。 キミは課題もうやったの?
我ながら下らない。
けれどもまあ、 これでいいのだ。
思いつく言葉はこれしかなかった。
受け取ったマリコはきっと、 どうでもいい手紙だと思うだろう。
だとしても、 手紙を送ると言うことに意味があるのだ。
それを読む瞬間のマリコは、 少なくともハリーのことを、 ハリーのことだけを、
思っているはずなのだから________。
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