ツインソウル



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何よ。 自分は何の苦労もなく飛べたからって・・・・何よ!

魔法使いでありながら、 怖くて箒に乗って飛ぶことができない。
下級生でさえ箒に乗って飛べると言うのに、 三年生のマリコは飛ぶことができない。
こんな悔しさはきっとハリー・ ポッターになんかわからないはずだ。




「そんなこと・・・・っ、 ポッターには関係ないでしょ!」




感情の流れに任せたまま滑りだした声は、 
我ながらヒステリーじみてしまったとマリコは感じた。
そんなマリコを見つめているハリーは目を丸くしたまま、 しきりに瞬きをくり返す。





「ポッターはいいよね。 どうせ、 飛行訓練だって何の苦労もなかったみたいだしさ」




そう言い放ってマリコは視線を地面に戻す。
かき分けすぎて下を向きかけた草と草のあいだから、 見覚えのある棒の先端がのぞいていた。
ただの折れた木の枝かもしれないと思ったけれど
その棒の先端をつかんで持ち上げる。 間違いない。
これはマリコの杖だ。
マリコは杖を握ったまま、 それをしげしげと眺めてどこも壊れてないことを確認すると
ローブのポケットに戻した。
そうしてそのままその場を立ち去るつもりでいた。 が、 
ハリーは再び重い口を開いた。




「ちょっと待てよ・・・・!」




低い声。

ハリーは立ち上がった。
そして、 ずかずかとやや乱暴な足取りでマリコに詰め寄った。




「な、 何よ・・・・!?」




マリコは思わず一歩、 後ずさる。
緑色のその目は、 ぎらぎらと鋭く血走っていた。 怒りの色。




「さっきから黙ってれば・・・・何で僕がキミに怒鳴られないといけないんだよ。
仮にも僕は箒から落ちたキミを助けたんだぞ!?
お礼のひとこともなしか!? え!?」

「な・・・・言ってくれるじゃないの・・・・」




マリコの唇は、 わなないた。




「ああ、 いくらでも言ってやるさ!
あんなに必死な思いで助けたって言うのに、 どうして僕が怒鳴られなきゃいけない!?」




お互い、 一度怒りだしてしまうともう引き下がれないとでも言うかのように
半ばやけに近かった。
今度はマリコがやや乱暴な足取りでハリーへと詰め寄った。
腰に手をあてて、 顎をほんの少し突きだして。




「どうして私がポッターに怒鳴るかって?
じゃあ私もいくらでも言ってやろうじゃないの。
それはね・・・・あんたがデリカシーなさすぎだから!
・・・・ハリー・ ポッター?
どんな奴なんだろうと思ってたけど、 ちょっと名前が知れてるからって
調子乗りすぎなんじゃないの?」




いくら女子でもさすがスリザリンだとハリーは思った。 なんて気が強くて短気なのだろう。
もしかしたら______もしかしたら、 ほんの少しは優しい女の子なのかもしれない。
そう思っていた自分がばかばかしく感じる。




「へえー・・・・。 奇遇だな。
僕もキミがどんな女なのかと思ってたけど、 所詮はマルフォイと同レベルだな」

「ドラコと・・・・? どう言う意味?」

「ただ口だけが達者。
プライドが高くて、 傲慢・・・・かな 」

「ドラコのことを悪く言わないでっ!」




叫びに近い怒鳴り声だった。
ハリーの耳にきんと響く。 鼓膜が痛いくらいにきんきんとして、 
それと同時に、 胸の奥に小さなトゲが刺さったようにちくちくと痛む。
ハリーは、 できることなら今すぐにでも胸の奥に手を突っこんで
痛みの正体であるトゲを取り除きたくてたまらなかった。
そしてさらに怒りが増した。
マリコが 「ドラコ」 と、 口にした瞬間に。

まるで、 マリコの隣にドラコの生霊が立っているみたいだった。
それによって、 ハリーの怒りが倍増するみたいに。




「悪くか・・・・そうだな。
バックビークのおかげで今日のマルフォイはいい気味だったよ」

「最っ低!」




マリコが手をふり上げてハリーにビンタすると、 
あまりにも激しい勢いだったからか、 
叩いた音と衝撃がハリーの頬にいつまでもこだまのように響き残っていた。

ハリーは頬を手でおさえつけながら、 じっとマリコを睨み返す。
まさか、 いくらなんでも殴られるとは思っていなかった。
そして、 ますます腹が立った。
ビンタまでしてドラコを庇おうとするマリコに。
ここにはいないのに、 面影だけを宙に漂わせているようなドラコに。

人間、 怒りの感情に身も心も委ねたままでいると
何をしでかすかわからないものだ。
言ってはいけないことも平気で口走ってしまう。




「箒から落下したのがハナムラだとわかってたら助けなきゃよかったよ。
スリザリンの奴は一度、 地面にでも頭ぶつければ
その衝撃でまともな性格になるんじゃない?」
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