ツインソウル


1 激戦のなかのロマンス
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1 激戦のなかのロマンス





瓜二つだ。
その漆黒の柔らかな長い髪、 その小鹿のような憂いを帯びた瞳、 その紅い艶やかな唇、 
その白い肌までもが______。

まるで、 学生時代のルリコが目の前にいるようだと
ルシウス・ マルフォイは目を丸くした。

ドラコにマリコのことは色々と聞いていた。
まさかとは思っていたがやはり______。

やはり、 マリコ・ ハナムラはルシウスが初めて愛した女
ルリコの娘だったのだ。
憎きグリフィンドールの男と結婚して授かった娘______。

当然、 妻のナルシッサと息子のドラコはそんなこと知る由もない。


マルフォイ邸から発車した、 がたごと揺れる馬車のなか。

ナルシッサは広げた扇子とヘッドドレスのレースのあいだからのぞく青い瞳で
ちらちらとマリコの横顔を盗み見ていた。
息子のガールフレンドとして相応しいかどうかを値踏みでもするかのように。
どうやらナルシッサから見たマリコは”合格”らしい。

マリコの隣に座るドラコもまた、 ちらちらとマリコを見つめている。
嬉しさ半分、 気まずさ半分。
マリコが居心地悪そうにしているのは、 馬車に乗り慣れていないせいだけではない。
その横顔からはドラコにだけわかる不機嫌さが漂っているのだ。
不機嫌の訳は、 パンジーがあえてこれないことをわかっていながら
直前まで黙っていたからだ。




「のど乾いたな。 なにか飲むか?」

「腹は減っていないか?」

「疲れたか?」

「退屈していないか?」




屋敷から馬車に乗っている今の今まで、 
ドラコはあの手この手で少しでもマリコのご機嫌を取ろうと必死だ。
だけどマリコはドラコがなにを言おうと、 なにをしようと、 頭をふるだけだった。




「私は大丈夫だから、 なにも構わないで」




何度めだかでマリコはそう言い放った。
そう言われてしまうとドラコは黙っているしかない。
マリコのご機嫌が直る(?)のを静かに待つしかない。

クィディッチ・ ワールドカップにマリコを半ば強引に誘ったのはドラコなりの作戦だった。
少しでもマリコと一緒にいる時間が多ければ多いほど、
マリコは自分を思ってくれるかもしれないと______。

ちくちくとルシウス、 ナルシッサ、 ドラコの視線を感じてマリコ自身は憂鬱でたまらなかった。
パンジーは「リゾートバカンス!」で、 これないらしいし、
家族たちは「ワールドカップに!? ぜひともいってくるといい! こんな機会は滅多にない!
あ、 会場で売ってる超珍品土産もよろしく!」なんて言いだす始末。
おまけにドラコの両親とワールドカップとキャンプのあいだ中一緒だと思うと緊張して息が詰まりそうだ。
______実際、 既に息が詰まりかけている。______

______でも・・・・・・、

ハリーに会えるかもしれない。

そう考えるだけでワールドカップ以上にどきどきした。
手紙や電話のやり取りは何度かしていたものの、
実際に会うのは久々だ。

もし、 もし会場で会ったとしたらなんて声をかけるべきだろう。
想像するだけでもう、 今から照れ臭くなってしまう。

窓に寄りかかるようにして百面相するマリコを、
ドラコは怪訝な顔で見つめていた。
馬車はゆっくりとワールドカップ会場へと近づいてゆく。









マリコよりもひと足早く、 既にハリーは会場へと到着していた。
ロンとハーマイオニーと共に、 風変わりな超珍品土産を見てまわっている。

さまざまな匂いや音や声が激しく交わる空間。
賑やかを通り越して騒がしく、 三人は互いの声を張り上げないと会話が困難なくらいだ。

光るロゼットだの、 踊る三つ葉のクローバーがびっしり飾られた緑のとんがり帽子だの、
本当に吼えるライオン柄のブルガリアのスカーフだの、 打ちふると国歌を演奏する両国の国旗だの、
本当に飛ぶファイアボルトのミニチュア模型だの、 コレクター用の有名選手のフィギュア。

食べ歩きをしながら、 ワールドカップグッズも見てまわる。
重たかった財布はあっと言う間に軽くなりそうだ。




「夏休み中、 ずっとこのためにお小遣い貯めてたんだ!」




三人のなかで一番興奮気味のロンは、 早速クローバーのとんがり帽子を買い、
ビクトール・ クラムのフィギュアも買っていた。

隣でハリーがわあ、 と、 声を上げる。




「これ見てよ!」




ハリーはべつのカートに駆け寄った。
ロンとハーマイオニーもそれにつづく。

カートに積まれた真鍮製の双眼鏡のようなものを、 三人は手に取って眺める。

「万眼鏡(オムニキュラー)だよ」と、 セールス魔ンは言う。

双眼鏡として使えるだけではなく、 アクション再生ができて尚且つ、
スローモーションでプレーを一コマずつ制止できる優れものだ。




「大安売り! 一個十ガリオンだ」

「三個ください」




セールス魔ンの熱心な売りこみにハリーは乗った。
三十ガリオン払い、 万眼鏡をふたりに手渡す。




「クリスマスプレゼントはなしだよ。
しかも、 これから十年ぐらいはね」




冗談っぽく言いながら。




「いいとも!」ロンは満面の笑みで、

「うわぁぁ、 ハリー、 ありがとう」いつもはクールなハーマイオニーは、 はしゃいだ声で喜んでいる。

ハリーに万眼鏡のお礼にと、 小遣いを使い果たしてしまったロンのためにもと、
ハーマイオニーが三人分のプログラムを買った。

すっかり財布が軽くなり、 三人並んでテントに戻る道でハリーは突然、 足を止めた。




「ハリー?」

「・・・・どうしたの?」
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