夢小説 ATTACK ON TITAN
□シュヴァルツ
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「妊娠してるの」
突然、 エミリからそう聞かされたときは頭を殴られたようなショックが全身を貫いた。
マジかよ!?と聞けば、 エミリはどこかうっとりした目で頷く。
______マジかよ……マジかよ……なあ、 嘘だろオイ
ショックの余韻が抜けないなか考えたのは相手だ。
団長、 兵長、 エレンと、 その姿が俺の脳裏を掠って行く。
ああ、 チクショウ。 エレンだとしたらボコボコにぶん殴ってやりてぇ。
(団長か兵長ならいいと言うわけでもないが)
「ど、 どうすんだよ!? 産むのか……?」
驚きと動揺で裏返ってしまった俺の声。
きょとんとした顔のエミリは、 おかしそうに笑い出す。
「なに言ってるの? お腹の中の赤ちゃん、 大きくなってきてるんだよ? 産むしかないでしょ」
それはそうだけど______と、 飲みこむ。
「そ……っ、 それで、 赤ん坊はいつ生まれる予定なんだ?」
「多分、 もうすぐ。 いつ産まれてもおかしくない状態」
俺は思わず、 はぁ!?と叫んだ。
「なあエミリ、 どうしてそんな状態になるまで放っておいたんだよ!?」
「ちょっと待ってよ、 放っておいてなんかいないよ。 妊娠がわかってからもときどき診てもらってるし」
「そう言うこと言ってんじゃねぇよ! 相手は誰なんだよ!?」
エミリはムッとした顔で俺を見上げて指差す。
「……ジャン」
「は?」
俺? エミリの腹の中の赤ん坊の父親が、 俺!?
待て待て、 心当たりが全くない……。
むしろ俺はそんな営み一度も経験してないぞ。 (エミリと経験したいとはずっと思ってたが)
ヤバイ。 どうしよう……思い出せ。 興奮しすぎて意識ぶっ飛んだか!?
忘れてるだけかもしれない……。
って、 そんな重要なこと忘れるか!? 考えろ考えろ……
「だーかーらぁー、 ジャンの馬だってば!」
「う、 馬ぁ!?」
俺はまた、 はぁ!?と叫んだ。 今度は大声で。
エミリがシーッと指を立てる。
「お腹、 見てよ。 大きくなってるでしょ?」
「そ、 そうか……? 言われてみればなったような気がしなくなくもな……」
屈んでエミリの腹を凝視すると、 ゲンコツが降って来た。
声にならない声で頭のてっぺんを押さえる。
手加減なしのゲンコツだ。 一瞬、 火花が見えた。
「何すんだよ!? 痛ぇじゃねぇか……!」
エミリはまだ拳を握ったままだ。 下手すればもう一発飛ばす勢いかもしれない。
「ねぇ、 アンタ勘違いしてるでしょ?」
「は? おまえが妊娠してるって自分で言ったんだろ?」
エミリの顔がみるみる赤く染まる。 耳まで真っ赤だ。
「そんなわけないでしょ! 妊娠してるのはこのコだってば!」
エミリは愛馬(シュヴァルツと言う名前だ)の腹を指した。
なるほど、 確かに腹がでかい。
「ふざっけんなよ……! びっくりしたじゃねぇか!」
糸の切れた操り人形のように、 俺はしゃがみこんだ。
「それはこっちの台詞! あぁほら! 干し草が空っぽ! 持って来て」
へいへいと力のない声しか出ない。 あぁ、 ビビった。 マジでビビった。
たっぷりの干し草を運ぶと、 俺の愛馬(ブッフヴァルト)は早くよこせとジャケットを噛んだ。
馬に、 先を越されるなんて……。 やることちゃっかりやりやがって……チクショウ!
シュヴァルツにつきっきりのエミリを見やる______少しは手伝えと思いながら______
チクショウ! 俺なんてまだ、 エミリと清すぎる関係だ。
「あ! お腹が動いてる!」
見て見てと興奮気味に手招きされ、 シュヴァルツのでかい腹を眺めた。
腹が重たいのか、 シュヴァルツは動きが鈍い。
膨らんだ腹はよく動いていた。 左右に歪み、 引っこんだり突き出たり……。
「すごいね、 シュヴァルツ……もうすぐお母さんになるんだね」
「ね」と笑顔で見上げられれば俺までくすぐったい嬉しさに包まれる。
______おいおい、 なんかこれって超いい雰囲気じゃねぇか
肩を抱くとエミリはうっとりと俺に寄りかかり、 俺の手に自分の手を重ねて来た。
______よっしゃ!
よしよし、 いいぞいいぞ。
このままキスのひとつくらいできそうな勢いだ。
多分、 エミリもそれを待っている。 そんな気がした。
「おいエミリ! 今さっきアルミンとミカサが______、」
邪魔(エレン)が登場しなければ______。
俺たちは慌てて離れた。
「え、 エレン!? どうしたの?」
エレンの奴は怪訝な顔をする。
「何かよくわかんねぇけど、 おまえのこと待ってるぞ。
つーか、 遅ぇよ! いつまで馬小屋に籠ってるんだよ」