夢小説 ATTACK ON TITAN


□愛憎プフェーアト
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5話-愛情

「こんなに前線に出ていいの、 ジャン? 僕らの任務は前衛の取りこぼした巨人の______」

「呑気なこと言ってんじゃねぇ、 巨人をぶっ殺してこその兵士だろうが!」

トロスト区襲撃想定訓練。
ジャンはアルミンの制止を振り切って自分の持ち場を離れた。
(駐屯兵のアンカに、 しっかりと望遠鏡で見られている。)
市街地を立体機動で駆け抜ければダミー巨人が現れた。

「俺がやる!」

アルミンと呆れ顔のアニに向かって言い、 剣を振り上げる。
突然の風のように別方向から飛んで来たシルエットが、 ジャンの狙っていたダミーのうなじを削ぎ落とす。
狙った獲物を横取りされたような悔しさを感じたけれど、 それがミカサだとわかった瞬間、 ジャンの唇の端が持ち上がった。 へっと笑う。

______さすがだぜ、 やはり俺を凌げるのはおまえしかいねぇ……

「おまえら、 こっちだ!」

ガスを蒸かしたジャンはミカサとは別方向へと飛んだ。



「すごかったね、 やっぱり今回もミカサが討伐数トップだったよ」

エレンはまたもミカサに負けてしまったことが悔しそうだった。
訓練を終えて三人で荷物運びをしながら、 すごいすごいとエミリは笑っている。
どこか浮かれ気味なのはエミリだけではない。
訓練のためとは言え城壁都市へとやって来て、 104期訓練兵たちはどこか遠足気分だ。
突然、 この大通りに南側領土の最高責任者であるピクシス司令が現れたかと思えば、 
ジャンを取り囲むように料理がどうのこうのと騒がしくなった。
エレンとミカサとエミリは遠目に眺める。

「……ったろうじゃねえか! 料理だろうが掃除だろうが構わねえ! 俺が勝ったら二度と邪魔するんじゃねえぞ、 芋女!」

「よかろう! 決戦は今夜! フタサンマルマルにて予定の夜食とする! 最高にうまい夜食を持って来るがええ!」

まるでお祭り騒ぎだ。

<サシャとジャンの料理対決だ!>

<こりゃあ見ものだぜ!>

<今夜は眠れねえ!>

<いや、 眠らせねえ!>

エミリは、 拍手を送りたくなるほどこの騒ぎに呆れた。
「なんなんだ?」とエレンが言い、 ミカサとエミリは「さあ」としか言えない。
ジャンと同じ班になってしまったせいで狩りに付き合わされる羽目になったアルミンとアニが不憫だ。
(平原へと向かうときのアニの不機嫌を極めた顔は、 黒い煙を燻ぶらせる勢いだった)
夕方。
駐屯兵団本部前で、 荷馬車から降ろした木箱をエレンとミカサとエミリが運ぶ。
これがとても重たい。 うっかり足の上になんて落としてしまえば骨が砕けてしまいそうだ。
エレンとエミリは、 それぞれ力をこめて運ぶ。
呻き声を押し殺すように運ぶ二人のそばを、 ミカサがすいすいと追い抜く。
三段に重ねた木箱を軽々と。
エレンとエミリが呆気に取られていると、 運び終えたミカサはエミリの手から木箱を取った。
ぽんと投げるようにそれも運び終え、 エレンが持っている木箱も運ぼうとする。

「おい、 やめろ」

エレンにとってはプライドが傷つく。
見かねたミカサは「でも……」

「でもじゃねえ! やめろ!」

エレンはミカサを押し退けようとする。
だけどミカサはエレンを放っておけない……ここで自分があいだに入るべきかとエミリが考えていると、 あの……と遠慮がちに声をかけられた。
振り向くと、 少し太った中年の婦人が立っている。

「こちらにジャンボ……ジャン・ キルシュタインはおりますでしょうか?」

エミリにつづき、 エレンとミカサも振り向いた。
ジャンと聞けば、 もしかして……と思う間もなくすぐにわかった。 母親だ。

「イェーガー、 アッカ―マン、 コラール、 荷物は運び終えたか?」

様子を見に来た駐屯兵だ。 突然やって来たジャンの母親を見やる。
そしてエレンたちを一瞥した。

「ジャンに会いに来たそうで……」

エミリが言うと、 駐屯兵はすぐに察し、 ジャンの母親へと視線を戻す。
こちらへどうぞとジャンの母と並んだ。
おまえ達も荷物を運び終えたら食堂に行けよと言い残して。

<突然すいません。 お忙しいときに>

<いえ、 気になさらないで下さい>

<申し遅れました……私、 ジャン・ キルシュタインの母でございます>

二人につづいてエレンとミカサとエミリも食堂へと向かった。
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