夢小説 ATTACK ON TITAN


□愛憎プフェーアト
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4話-救いの皮肉屋

ゴオゴオと風を切り裂くように飛ぶ森のなか、 木の影から突如現れる巨人(ダミーだ)のうなじを訓練兵が切りつけて行く。
ジャンは歯軋りして悔しがり、 ベルトルトとアニを横目にスピードを上げた。
斬撃の深さで敵わないのならと、 先に巨人(ダミー)を見つけて点数を稼ぐ魂胆だ。

「憲兵団になるのは俺だ!」

ベルトルトとアニに叫び、 飛んで行く。
この訓練は各場所にキース含む教官たちがいて、 訓練兵の動きをしっかりとチェックしている。
(それによって点数がつけられるのだ)
______『ジャン・ キルシュタイン』
立体機動装置の理解が深く、 その性能を引き出す術に長けている。
現状を認識する能力も持っているが、 抜き身すぎる性格が軋轢を生みやすい______
巨人を再び見つけ、 今度こそ俺が……と向かったところで小回りのきく機動でコニ―が、 
身のこなしが素早いサシャが、 ジャンを追い抜いて行った。

「クソ! おまえらついて来んじゃねぇよ!」

今度こそ! 絶対に俺が……とコニ―とサシャを振り払うように飛ぶ。
そしてまた再び見つけた巨人。 うなじを狙って斬撃。
切り落とした手応えをしっかりと感じたものの、 それが何かと同時に重なる奇妙さ……。
巨人のうなじは二つ並んで切り落とされていたのだ。 上下に二つ。 深さも同じだ。
ジャンは飛び上がって旋回した。

「エミリ……! テメェも俺の後を追って来ただろ!? マネすんじゃねぇよ!」

エミリはハッと薄く笑い飛ばし、 目尻を険しく吊り上げる。

「なに自惚れちゃってんの? そんなわけないでしょ。 マルコだったらそうしちゃうかもしれないけど、 なんで私がアンタなんか……バッカみたい」

ジャンは耳がやたらと熱くなる怒りを覚えた。 エミリは別方向へと飛んで行く。
______『エミリ・ コラール』
仲間からの信頼、 成績含め劣る要素はないが、 特別目立つ要素もない。
平凡。 それが兵士として良くも悪くも出る______

「なぁマルコ? おまえは一番に目標を見つけても他に譲ってるように見えたんだが……
憲兵団になりたいんだろ? 得点が欲しくないのか?」

森での訓練終了後、 エレンがマルコをじっと見つめた。
エレンの言葉にエミリも、 サシャもコニ―もジャンも、 マルコへと視線を移す。
マルコは、 うーん……とすぐにはこたえない。 言葉で自分の考えを確認するようにゆっくりと呟いた。

「技術を高め合うために競争は必要だと思うけど、 どうしても……実戦のことを考えてしまうんだ。
一番遅い僕が注意を引いて他の皆に注意を取らせるべきだとか、 今回の殺傷能力を見る試験じゃ意味がないのに……
憲兵団にはなりたいのにな。 ずっと憧れてたから」

サシャとコニ―とジャンとエミリは黙ったままマルコを見つめる。
エレンは笑って頷いた。

「なるほどな……つまりおまえは根っからの指揮役なんだよ」

エレンの言葉にマルコはえ? と声を上げる。

「適役だと思うぞ? そう言う効率的な考えとか、 よく気が回る所とか……
俺ならおまえが指揮する班に入りたいね」

「うん、 私もエレンに同感だな」

エミリは笑顔を浮かべた。 サシャと目を合わせて頷く。

「私もマルコの班がいいです。 生き残れそうな気がします」

きっと、 その場にいる全員がそう思っていた。
マルコは照れ臭さで顔を赤く染める。 夕焼けと同じ色。

「トロスト区の襲撃想定訓練の班か? それなら俺もマルコにあやかりたいな。
間違っても死に急ぎ野郎の班には入れられたくないな。 10秒も生きていられる気がしねぇ……」

ちょっと待てと、 ムッとしたエレンが積み上げた丸太に腰かけるジャンを見下ろす。

「それは誰のことを言ってんだ?」

「心当たりがあったらそれで当たってるよ」

まあまあ二人とも、 とマルコがすぐに仲裁役へとまわった。
実際、 マルコの班にこの二人がいたとしたらきっと苦労するだろう……。
『バカ』と言われてるだけあるコニ―は『死に急ぎ野郎』が誰を指す言葉なのかわからないらしい。
腕を組んだまま首を傾げている。

「また始まっちゃいましたよ。 ジャンの遠回しな愛情表現が……」

「黙ってろよ芋女……」

サシャはひどい! と言わんばかりの顔。

「もうみんな忘れたと思ってたのに」

「なあジャン? 『死に急ぎ野郎』なんて名前の奴はいねぇと思うんだが」

「……おまえも黙ってろコニ―」
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