夢小説 ATTACK ON TITAN


□6話
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トロスト区奪還作戦。
地面が突き上がり、 ひび割れてしまいそうなほどの激しい揺れが残るなか、
黄色の煙弾が上がった。
作戦は成功。 だけど、 これで終わりではない。

「おい! どこ行くんだ!?」

駆けだす私の背中にジャンの声がぶつかる。

「援護に向かう!」

扉まで急ぐと、 緑色のマントを纏った集団が次々と私を追いこして飛んでいった。
緑色のマント______背には自由の翼。
______調査兵団……!?
戻ってきたのだ。
駐屯兵団の工兵部も調査兵団につづいて飛んでゆく。
(私のスピードは、 彼らの後を追うのがやっとだ)
飛んでゆくに連れ、 この目は確かに大岩が穴を塞いでいるのを捉えた。
その目の前で15メートル級の巨体が倒れこんでいる光景も。
______巨人と化したエレンの体だったもの______
ついさっきまで、 燃え盛っていたに違いない蒸気が熱風をここまで運んでくる。
エレンはどうなってしまったのだろう……。
ミカサとアルミンの姿も見当たらない。
扉から入ってきた巨人共はまだ、 たくさん残っていた。
ガスも刃もまだまだ余裕がある。
兵士としての腕はまだまだだけど、 掃討には加われる。
何人かの訓練兵も調査兵団や駐屯兵団工兵部につづく。
私も、 すぐさまその増援に加わろうとしていた。
背後で誰かが勢いよく降り立つのを感じるまでは。

「よお、 無事でいやがったか」

その声が聞こえたとき、 周囲の音が一瞬、 全て消えた気がした。
金属音。 刃をしまって一歩ずつ近づいてくるのが手に取るようにわかる。
私は、 振り向いた。
______リヴァイ兵士長……
嗚呼、 こうしてまた会えることをどんなに願っただろう。
私も二本の剣をしまった。 拳を胸にあてて。
はい。 
と、 こたえたつもりだったけれど、 掠れて小さくなり消えてしまう弱々しさ。
足音に合わせてリヴァイ兵士長のアームカートリッジとガスボンベが揺れて音をたてる。
一歩ずつ縮まる距離、 胸の奥からの震え……。
がしゃんと最後にもう一度、 揺れる音をたてて止まった。
突然広がる緑色のマント、 私を包みこむように______。

「……よかった。 おまえに死なれたら、 きっとアイツも困るだろうしな」

頭のてっぺんから聞こえる声。
アイツとは、 きっと兄のことを言っているのだろう。
ほのかな香水の匂い、 清潔なスカーフの柔らかな感触、 腕のなかの逞しさ______
私は胸にあてたままの拳をそっと解き、 両腕をリヴァイ兵士長の背中にまわした。
追いかけつづけていた自由の翼にしがみつくように。
マルコが言うように、 私はずっと、 この人を思いつづけてきた。
出逢ったときからずっと______……

「リヴァイ兵士長……好きです」

私を抱きしめてくれている腕が、 解かれた。
人類最強の兵士と言われている人だ。
こんな台詞なんて何十回何百回も聞かされて飽き飽きしているはず。
だけど伝えられずにはいられなかったのだ。
私は、 悔いなき選択をしたい。
奇跡はそう簡単には起きない。
今日も明日も生きていられる保証なんてどこにもないからこそ______。
足音が近づいてきた。 二体だ。

「下がってろ」

リヴァイ兵士長が素早く剣を抜く。
どちらも10メートルはあるだろう。

「一体は私がやります!」

私だって兵士の端くれだ。 その意を表すように剣を抜いた。
私たちは背中合わせで立った。 背に抱く紋章が一瞬だけ重なる。
そして、 飛び立った。
リヴァイ兵士長は早かった。
私が目の前の一体を仕留める間に数体仕留めることもできそうなほど。
仕留めた巨人が、 屋根を真っ二つにする勢いで倒れた。
屋根に凭れるように倒れた巨体の上、 立ちのぼる蒸気の向こう側から、 リヴァイ兵士長がじっと私を見下ろしていた。
どんな顔をしているのかは、 わからない。
その後、 私はすぐに他の訓練兵と共に増援にまわり、 巨人の掃討をつづけた。
訓練兵撤退後、 壁に群がった残りの巨人はトロスト区内に閉じこめ、 壁上固定砲で死滅となった。
(巨人の掃討戦は果てしなかった。 固定砲が放つ榴弾も)
ジャンと顔を合わせたのは数時間ぶりだった。

「援護に向かうつって飛んで行ったきり、 姿見えねぇから死んじまったかと思ったぞ」
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