夢小説 ATTACK ON TITAN


□5話
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さあ行こうとマルコに手を引かれ、 再び私たちは飛び立った。
本部を目指して。

「どうなってるの……!?」

だけど、 本部に向かっているとばかり思ったみんなは、 屋根の上で立ち往生しているのだ。
そのなかにジャンたちの姿があった。
ジャンは座りこんで頭を抱えている。 状況は嫌でもすぐにわかった。
本部に群がる巨人たち。 戦意喪失。
補給任務を放棄して籠城する補給班。
そして、 私たちはガス切れ寸前でこのままだと壁を登れない……。

「前衛の先輩方はほぼ全滅だ……
残された俺達訓練兵の誰に、 そんな決死作戦の指揮が執れる?
まあ……指揮ができたところで、 俺らじゃ巨人達をどうにもできない……
おそらくガス補給室には3〜4メートル級が入ってるぜ?
当然そんな中での作業は不可能だ」

ジャンの嘆きは絶望に拍車をかけた。

「やりましょうよ! みなさん! さあ! 立って!
みんなが力を合わせればきっと成功しますよ!
私が先陣を引き受けますから」

サシャの懸命な底抜けの明るい声でも、 状況は変わらない。
あざ笑うかのように風が、 ひゅうひゅうひょおひょおと強く吹きつづけている。

「ライナー……どうする?」

「まだだ……やるなら全員集まってからだ」

アニとライナーはやけに冷静だ。

「だめだよ。 どう考えても……」

ここにきてからずっと黙りこんだままだったマルコの声は、 風に掻き消されてしまいそう。
私はマルコの横顔を見上げた。

「僕らはこの街から出られずに全滅だ。
死を覚悟してなかったわけじゃない……でも……一体、
何のために死ぬんだ……」

マルコは瞬きすらしない。
私はそっと胸の紋章に手を当てた。
このポケット越しに、 兄の紋章と私の紋章が重なり合っているのを確かめるように。
リヴァイ兵士長がこれを私に託してくれたのに、 ここで死んでしまうなんて______……
夢を叶えられないままなのに、 兄のことを何も知らないままなのに、
リヴァイ兵士長に恋していると気づけたのに、 その気持ちすら伝えられないままなんて……
______嫌だ! 死にたくない!
のどの奥からせり上がってきたものが、 突然のミカサの登場によって、
なんとか唇の内側で留まった。
______ミカサは特別に後衛部だ。 ここに駆けつけてきたのはきっと、 エレンのことが気になったからだろう______
ミカサはエレンの姿がここにないことに気づくと、 真っ先にアルミンの元に駆け寄った。
“アルミン……怪我はない? 大丈夫なの? エレンはどこ?”
ミカサを含め私たちは、 アルミンの言葉で34班はほぼ全滅したことを知る。
トーマス、 ナック、 ミリウス、 ミーナ、 そして、 誰よりも闘志を燃やしていたエレン……。

「以上五名は自分の使命を全うし……壮絶な戦死を遂げました……」

泣き崩れるアルミンに、 さあ立ってとミカサが手を差し伸べる。
そして、 マルコの隣に立った。

「マルコ、 本部に群がる巨人を排除すれば、 ガスの補給ができてみんなは壁を登れる。
違わない?」

「あ……あぁそうだ……し、 しかし
いくらおまえがいても……あれだけの数は……「できる!」

「え……!?」

ミカサは、 刃を空に向かって掲げる。

「私は……強い……あなた達より強い……すごく強い!
ので、 私は……あそこの巨人共を蹴散らせることができる……例えば……一人でも。
あなた達は……腕が立たないばかりか……臆病で腰抜けだ……。
とても……残念だ。
ここで……指をくわえたりしてればいい……くわえて見てろ」

空に向かっていた刃は、 私たちへと向けられた。
“ちょっとミカサ? いきなり何を言い出すの!?”
“あの数の巨人を一人で相手にする気か? そんなことできるわけが……”
できっこないと言う声が次々と上がるなかでも、 今、 ミカサは飛び立とうとしている。
私もみんなの意見に同感だ。

「できなければ……死ぬだけ。 でも……勝てば生きる……
戦わなければ勝てない……」

ミカサは、 脇目も振らずに飛び立っていった。
______戦わなければ勝てない……
心臓が、 激しく脈打つ。
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