夢小説 ATTACK ON TITAN


□兵士の休息
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彼らは朝食のあと、 いそいそと自分の立体起動装置の点検をした。
______ガスの補給や、 脆くなったスチールの交換などだ。______
クリスマス・ イヴだからと言うわけでもないけれど、 どの兵士も嬉々としている。
今日は作戦や戦いの緊張と恐怖から解放されるのだ______!

「おいエルヴィン、 例の書類持ってきてやったぞ」

ノックもなしに突然部屋に入るリヴァイをエルヴィンは特に窘めたりもしない。
調べ物の最中だったらしいエルヴィンは本棚の前に立っていて、 その中の一冊を開いている。

「ああ、 机の上に置いてくれ」

エルヴィンは本を開いたまま言う。
リヴァイは書類の束をやや乱暴な手つきで机の上に置いた。

「リヴァイ、 おまえも今日はゆっくりするといい」

エルヴィンは本から視線を持ち上げてリヴァイに向ける。
外からにぎやかな声が響いてきた。
エルヴィンが本を閉じ、 机の上に書類の束と寄せる。
窓のそばに立つと、 リヴァイに見てみろと促した。
ふたりが見下ろす庭では104期生たちがはしゃぎまわっている。
雪玉をぶつけ合い______エレンとジャンはやんのかテメー! 文句あんのかよ!と
口喧嘩の延長でそうなっているが。______遠くに響く笑い声。
そのなかには先輩兵士の姿もちらほらと。

「ずいぶん楽しそうじゃないか」

エルヴィンはそっと笑う。

「まるでガキだな」と、 リヴァイ。

リヴァイはそのなかで笑い転げているエミリの姿を見つけた。
笑いながら両手を大きく広げ、 背中から地面______雪にダイブして両手両足をばたつかせている。
エミリが起き上がると雪には天使のシルエットが刻まれた。
______特にアイツこそガキだ……。
エミリを見て何人かがそれをまね、 次々と雪に天使のシルエットが出来上がって行く。
笑い声は絶えなかった。

「この雪のおかげだな、 彼らにはこんな休息が大切だ……。
調査兵団である以上、 いつ死ぬかもわからない……死んでもおかしくないからな」

リヴァイはエルヴィンの横顔を見上げた。
______エルヴィンはリヴァイよりもうんと背が高いのだ。______
その横顔には安堵と悲痛が入り混じっている。
きっと、 これは束の間の兵士の休息だ。
リヴァイはそうだなとだけ言い、 彼らを______正確にはエミリを見つめた。
サシャ! だめだめ! 雪なんて食べちゃ______!
エミリも食べてみてください、 やわらかくて冷たい食感がなかなですよ。
もう……っ!
リヴァイの視線はまるで磁力のよう。
エミリは導かれるように窓を見上げた。
______兵長……!?
ほんの十秒間あるかないかなのに、
磁力のような強さに導かれて見つめ合う目と目は、 切なさの奥で火傷してしまいそうなほどの熱が籠っている。
エミリは高鳴る鼓動を抑えながらリヴァイに向かって手を振ろうかと思ったけれど、
それより先にリヴァイはエルヴィンと窓の奥に引っこんでしまっていた。

エミリの言っていた通り、 ツリーに飾られていたりんごはとっくになくなっていた。
蝋燭だけがツリーを輝かせている。
昼間はあんなにもにぎやかだったのに、 夜になれば静まり返っていた。
リヴァイは自分の部屋に戻ると首元のスカーフを解き、 シャツのボタンを胸元まで外し、
ベッドに仰向けになる。
今夜はいつもより早く眠ってしまおうと思い、 着替えてから再びベッドに仰向けになった。
灯りを消し、 枕に凭れて目を閉じる。
眠りも、 その奥底にある夢も、 リヴァイを引きこもうとしていた……が、
リヴァイの目は勢い激しく見開かれてしまった。
静かすぎるせいでどこかの部屋から聞きたくもない声や音が漏れてくるのだ。
“ああ……っ! もっと奥まで強くしてっ、 そこぉ……いい……気持ちいいのぉ”
“ここか? こうか? あ______、 やべ、 俺もすげえ気持ちいい……!”
ベッドが壊れそうなほど軋む音まで響いてくる。 ふたりして何度もイクイクと言い合って。
______そのまま逝って帰ってくるな。
リヴァイは汚らわしいものに背を向けるようにして寝返りを打ち、 固く瞼を閉じた。
ふたりは長いこと喘ぎ、 ベッドを激しく軋ませている。
次にリヴァイが目を開いたときにはカーテンのすき間から眩しい光りが差しこんでいた。
あまりいい目覚めとは言えない朝だ______。
毛布の暖かさとは対照的に、 目覚めと同時に頬に感じる空気が凍るように冷たい。
前髪をかき上げて起き上がり、 カーテンを開くと眩しさに顔をしかめる。
ぼんやりと庭を見下ろしていると、 そこに足跡がついていることに気づいた。
しかもそれはまだ新しい。 リヴァイは窓を開いた。
たちまち吐く息が白くなる。
いったいこんな朝早くに誰が起きているのだろう……
朝陽を受けてきらきらと輝く雪と足跡を見つめながら考えた。
今度はドアのそばから物音が聞こえる。
窓を閉めて背後のドアを乱暴に開いた。

「誰だ!?」
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