楔〜恋人岬〜


□†第10章:最初で最後の約束を
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私の心よ、思い出して。
遠い記憶を・・・

私の心よ、思い出して。
たった一人の愛する人を・・・

私の心よ、思い出して。
彼の温もりを・・・






*





第10章

最初で最後の約束を

〜Sleeping Beauty〜









何曲も、何曲も、二人は踊り続けていた。
ひたすら、見つめ合いながら・・・。










「・・・お疲れになりましたか?」

「いいえ。クニッツは?」

「僕は、平気です。それに・・・
こうして、プルメリア様と踊っていて、疲れなど感じるわけがありません。」

「・・・私もよ。」





と、プルメリアは
長いまつ毛を伏せて、はにかむように微笑む。







「・・・・・・・。」

「・・・・・・。」










いつの間にか、演奏は終わっていたが
二人は、寄り添ったまま、互いの手を握り合っていた。










「プルメリア王女・・・!」

「・・・・・・!?」









と、そこへ、人ゴミをかき分けながらやって来たのは
クレイだった。









「・・・クレイ総督、どうかなさいました?」








クレイは、王女の手を引っ張ると
隣に立つクニッツを一瞥する。
まるで、彼に対して、宣戦布告するかのような瞳で。







「あなたのご両親が、お呼びですよ。」







プルメリアは、名残惜しそうにクニッツを見つめた。
「すぐに戻るわ」と、瞳で訴え、クレイへと視線を向ける。








「わかりました。今、行きます。」









真紅のドレスを翻して、プルメリアは
賑やかな声と、人ゴミの中に、紛れて行った。
その場には、クニッツとクレイの二人だけが取り残された。








「・・・・・・・・。」

「・・・この後、殿下から”重大発表”があるんだ。」

「・・・重大発表?」

「そうとも。ビックリしますよ。」

「・・・・・・・・。」

「だけど、君は聞かない方がいいかもしれませんね。
もう、帰った方がいい。」

「・・・・え?」











クレイは、くつくつと笑うと、マントを翻した。









「では、私も
殿下の元へ行きますので、これで失礼。」











一人、取り残されたクニッツ。
彼は、クレイの後姿をじっと睨みつけたのち
目だけで、愛する王女を探した。・・・王女はと言うと、
両親に挟まれるようにして、二人の間に立ち
何やら会話をしている。そして、クレイがプルメリアの隣に立つと
細い肩を抱く。












「・・・・・・・・。」











・・・どうやら、プルメリアに恋をしてるのは
自分だけではないようだ。
クレイの、”あの瞳”を見ればわかる。間違いない。
あのスペイン人船長は、プルメリア王女に恋してる。
クニッツは、その場に立ち尽くしたまま、拳を握りしめた。
ついさっきまで、プルメリアの手を握っていた、この手で・・・。










「・・・・・・・!」











ふと、クレイと目が合った。
彼は、挑発的な笑みをクニッツに向けると
プルメリアへと視線を戻し、どこかへ連れて行ってしまった。
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