楔〜恋人岬〜


□†第7章:ため息すら愛しいのに
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キス。それは、恋の魔法。



恋。それは
子どもの頃には必要なものではなかったのに
一度、自分に許したら
それなしでは、生きていけなくなったりするもの・・・。











第7章

ため息すら愛しいのに

〜愛しき21世紀のプリンセス〜








日曜日の夜
めでたく気持ちが通じ合った手塚と南は
それぞれの家の部屋の窓から
夜空を眺めていた。










お互いが、お互い
早く会いたい・・・と、思いながら。
つい、きのう
一日中一緒だったにも関わらず、それでも足りない。
全く足りないのだ。










「南・・・?」







短いノックののち
扉が静かに開き、兄の裕大が顔をのぞかせた。







「あ、お兄ちゃん・・・。何?
どうかしたの?」

「まだ起きていたのかい?」







大和は、南の隣に立つと
妹と同じようにして、夜空を眺めた。
東京の空と言うだけあって、満天の星・・・とは
言えないが、ぽつり・・・ぽつりと、星が輝いている。







「んー・・・、なかなか眠くならないんだもん。」

「そんなことを言って、明日からは朝練もあるのだから
夜更かしは、ダメだよ。
もう寝なさい。」









と、窓とカーテンを閉めた大和。
それを見て、南は唇を尖らせた。








「はいはい。わかりましたよー!
じゃあ、もう少ししたら・・・寝る。」







アラームを5時30分に設定した南は
鼻歌まじりに鏡の前に立つと
ブラシで髪をとかしはじめた。






「あれ?どうしたんだい?」

「え?何が?」







鏡を見つめたまま聞く。







「この、枕元にあるテディベアだよ。」






と、大和。
南は、うっとりと瞳を細めて微笑んだ。






「プレゼントしてもらったの。可愛いでしょ?」

「ああ。そうだな・・・。
“彼氏”からの贈り物かい?」






南は、頬を薔薇色に染めてクスクスと笑う。








「うん・・・。まあね。」

「・・・そうか。今度、”また”うちに連れて来るといい。」

「うん・・・。」

「”手塚君”をね。」

「・・・・・!?」






ハッとして振り向くと
何もかもお見通し。と、言わんばかりの兄を目が合ってしまった。








「お兄ちゃん、どうして・・・「僕は、最初から知ってたけど?」

「・・・え!?」

「手塚君と南は、いつかはこう言う関係になるな・・・って。」

「・・・・・・。」

「予感的中だ。」








・・・やれやれ。
兄に一本取られてしまった。
南は、降参したように笑い
再び、鏡を見つめながら髪をとかし
鈴の音を響かせるような声で、歌い始めた。
きのう、ディズニーシーで聴いたラブソングを。







大空ー♪目が、眩むーけれどー♪ときめくー胸ー初めてー♪
あなた見ーせてーくーれーたのー♪
素敵すぎてー♪信じられなーい♪煌めく星は、ダイヤモンドねー♪
A whole new worldー♪
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