楔〜恋人岬〜


□†第5章:でも、それは友情?
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第5章

でも、それは友情?

〜いざ、冒険とイマジネーションの海へ!〜








「ダンスパーティー・・・ですか?」









クニッツとプルメリアは、初めて出会ったビーチで再び
二人並んで腰をおろしていた。
セラフィーナとクオーツ(プルメリアの愛馬だ)は、すっかり仲良くなったらしく
恋人同士のように寄り添って、青々とした草をほお張っている。








「ええ。そうよ。お父様とお母様とクレイ総督の提案でね・・・」

「それは・・・、いつ?」

「今夜よ。」

「・・・今夜?」

「ええ。でね、あなたも招待したいの
勿論・・・来てくださるわよね?」








風と波の音が響き、二人の髪を揺らす。
恋人同士のように寄り添っているのは、二頭の馬だけではないようだ。
この二人も・・・。








「しかし、王女様・・・
僕は、貴族ではありません。」

「あら、そんなの関係ないわ。」









プルメリアは、あっけらかんと答える。






「いえ、王女様がそう思っていなくても、本来
パーティーとは、貴族だけの行事なのでは・・・?」

「お父様も、お母様も、クレイ総督も、ばあやも
是非、クニッツに来て欲しいって言ってたのよ?
私を助けて下さったお礼にって・・・」

「王女様・・・あなたを助けたと言っても
大したことはしてません。
その気持ちだけで充分です。」









こうして、プルメリアと再会して誘ってもらえることは
嬉しすぎるくらいだ。
しかし、クニッツにとって貴族だけの場所に入り込むのは未だかつてないこと。
だからこそ、ダンスやテーブルマナーだってわからない。







「ねーえ?」





プルメリアは、どこか不機嫌そうに頬をふくらませると
ドレスの裾を軽く持ち上げ
膝を抱えて座り直した。






「はい、何でしょう?」

「それよ!それ・・・!」

「え?」

「クニッツのその喋り方!堅苦しすぎよ。」

「・・・そうですか?」

「そうよー!私たち
歳も大して変わらないのに、”王女様”なーんて呼ぶのやめてよね。」

「しかし・・・王女様は王女様ですから。」








その言葉に「もう!」と
プルメリアは、ますます頬を膨らませる。
そのせいで、顔がまん丸になり、美しい顔が台無しになりつつあった。
本人は、そんなことお構いなしらしいが・・・。








「プルメリア・・・って、呼んで?
私もあなたをクニッツって、呼んでることだし。
それから・・・、」

「それから・・・?」

「その丁寧語もやめて!私たちは、もう
“お友達”なのよ?」

「・・・・・・・・。」








王女でありながら、プルメリアは
何故、こうも人懐っこく愛嬌があるのだろう・・・。






「恐れ入ります。”プルメリア様”・・・。」

「プルメリア様・・・か。う〜ん・・・
まっ、とりあえず、今はそれで許してあ・げ・る!」







プルメリアは、立ち上がり
ドレスについた砂を払うと靴を脱ぎ捨て
太陽の光を受けて輝く海へと歩き出した。








「あ!あーっ!」






そして、ふいに起こった風が
プルメリアの髪を強く揺さぶり、髪飾りにしていたプルメリアの花が
舞い上がって行ってしまった。
どこまでも、どこまでも高い空と海の向こうへと・・・・。






「よろしければ、これを・・・。」





クニッツも立ち上がり、プルメリアの隣に立つと
艶やかな黒髪に新しい花を飾った。








「あ、ありがとう。
一体どこから持ってきたの?」

「あちらに、少し咲いてましたので。」

「あちらって・・・どちら?」








プルメリアは、クニッツの視線の先を辿った。
クオーツとセラフィーナのそばの茂みに、ぽつりぽつりと
プルメリアの花が咲いている・・・。
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