ツインソウル



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またビンタが飛んでくることをハリーは予想していた。
だけど、 その予想は外れ。
マリコは握りしめた拳を震わせながら、 ひとことだけ言い捨てて去っていった。




「本当に・・・・最低な人・・・・っ」




口喧嘩は、 ハリーの勝ちでおしまい。
だけどハリーの胸の内がすっきりすることはなかった。
嫉妬と言う事実を知らない。 受け入れてないからこそ。




「どこ行ってたんだ!? 授業が終わってからいなくなるもんだから
探したんだぞ?」

「そうよ、 マリコ。 心配したんだからね」




マリコが不機嫌な顔のまま寮に戻ると、
談話室にいたドラコとパンジーはその姿を見つけるなり真っ先に駆け寄った。
(お菓子に夢中なクラッブとゴイルを除いて。)




「ん・・・・心配かけてごめんね。 ちょっと・・・・気分転換に散歩してたの」




散歩? と、 パンジーが。
何でまた? と、 ドラコが。 
揃って怪訝そうな顔をするも、 ふたりはマリコが戻ってきたことに安心してる様子だ。




「ちょっと私、 夕食まで部屋で休んでるね。
なんだか今日は疲れちゃった・・・・」

「具合・・・・悪いの?」




パンジーは顔をくしゃっとさせてマリコの顔をのぞきこむ。
ドラコも同じことを言いたそうにマリコを見つめている。




「うううん。 そんなことないよ。 心配かけてごめんね。
夕食の時間になったらまたくるからさ・・・・」




マリコがふたりにそう言って女子寮へと向かうと
ドラコは 「ゆっくり休むといい。 無理するな」 と。
「あとで何か飲み物持っていくわね」 と、 パンジーも。
マリコは、 ふたりの優しさを背中で受け止めた。
ハリーのせいでささくれ立った気持ちが、 ゆっくりと鎮まっていく。

実際、 ハリーが思ってる以上に______むしろ、 ハリーは知らないだろうけれど。______
スリザリンの仲間意識______結束力は強い。
純血主義であり、 多数の闇の魔法使いを輩出しているけれど
グリフィンドール・ ハッフルパフ・ レイブンクロー以上に
スリザリンは仲間意識・ 結束力は強いのだ。 きっと。
他の寮と決裂______特にグリフィンドールとは______しているとしても。

ややふらつきがちな足取りで部屋へと入り、 ベッドにダイブする。
うつ伏せで寝転んで、 枕に顔をぎゅっと押しつけて目を閉じると
ついさっきの、 あの、 憎ったらしいハリーの顔が嫌でも鮮明に思い浮かんだ。




「・・・・・・・・」




こうして冷静になってみると、 せめて______
たとえ、 それがぶっきらぼうな口調になってしまったとしても
ひとこと「ありがとう」 なり 「ごめんなさい」 なり言うべきだったのかもしれない。




______でも、 やっぱり許せない・・・・アイツめ!




『箒から落下したのがハナムラだとわかってたら助けなきゃよかったよ。
スリザリンの奴は一度、 地面にでも頭ぶつければ
その衝撃でまともな性格になるんじゃない?』 




あんな捨て台詞がなかったら、 もしかしたら、
お礼のひとことくらいは言えた・・・・かもしれないのに。
シーツをギュッと拳ごと握りしめる。
ピンとしわひとつない、 パリッとしたシーツが亀裂のように小さなしわを何本も作りだす。
まるでそれが、 マリコの心のように。




「マリコー! 夕食の前のティータイム。 一緒にどう?」




ドアからいたずらっぽく顔をのぞかせるパンジーに気づき、
ゆっくりと上半身だけ持ち上げた。
きつく引き結んでいた唇が綻んだ。




「甘いものは別腹だもんね。 クラッブとゴイルから奪ってきたクッキーもあるのよ」




パンジーが持っているトレーからは、 紅茶のカップがふたつ。
ぬくもりも感じさせるあたたかな湯気が浮かんでいた。
小脇には、 クラッブとゴイルの”肥満体であるための”栄養源のひとつであろう
細長い箱に入ったクッキー。




「ありがと、 パンジー。 いただいちゃおっかな」
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