楔〜恋人岬〜


□†第5章:でも、それは友情?
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「うっあー!あんな所に咲いてるんだね!」

「プルメリア様、素足で走ると転びま・・・・」

「っ!」








すよ。・・・と、
クニッツの忠告もむなしく、プルメリアは
足を砂にもつれさせバランスを崩してしまった。当然
髪もドレスも・・・あちこち砂まみれ。








「大丈夫ですか・・・!?」

「ん〜・・・、あんまり大丈夫じゃないかも。」








クニッツが差し伸べた手を取り、ゆっくり起き上がると
「砂、口の中に入っちゃったみたい」と、舌を出して
悪戯っぽく微笑んだ。






「お怪我がなくて、何よりですが・・・
綺麗なドレスが汚れてしまいましたね。」







ため息まじりに微笑み、プルメリアのドレスにまとわりつく砂をはらう。
プルメリアは、立ち上がり「もういいわ」と
クニッツの手を振り払うと、くるりと背中を向けて歩き出し
プルメリアの花が咲く場所でしゃがみこんだ。








「・・・プルメリア様?」







怒ってる?怒らせた?
・・・しかし、自分は王女の機嫌を損ねるような
失礼な言動をとったのだろうか?
いや、そんなはずはない。








「・・・・・・・。」







クニッツは、ゆっくり・・・ゆっくりと
プルメリアのそばに歩み寄った。
王女は、黙りこんだまま
ぷつん・・・ぷつん・・・と、花を摘んでいる。






「・・・プルメリア様?」






こわごわと、もう一度
王女の名前を呼んでみた。
プルメリアは、クニッツと視線が重なった瞬間
力なく・・・寂しげに微笑んでみせる。







「綺麗なドレスも・・・宝石も・・・
金、銀、財宝・・・”そんな物”私にはどうだっていいの。」

「・・・・・・!?」








何故?
何故、王女はこんなにも悲しそうな顔をして笑うのだろう?









「しかし・・・、僕のような貧しい身分の者から見れば
貴族の方達は食べるもの、着るものに不自由していないし・・・
「自由のない暮らしなんて嫌!」

「・・・え?」

「あなたの言う通り、貴族の暮らしは、
何ひとつ不自由なんかしてないわ。」

「だったら何故・・・そのようなことを言うのですか?」

「どんなに豪華なドレスを着て、どんなに豪華な食事をしても・・・
王女として生まれた私に、自由なんかない。」

「・・・・・・・・。」

「たまたま、王女として生まれてしまっただけなのに
礼儀作法を叩きこまれ、屋敷から外に出ることなんか滅多にできない。
生まれてからずっと・・・ずっと、閉じ込められてるみたいよ。
友達だっていない。
そして、”近い将来”・・・結婚だってしなければいけない。」

「・・・・・!?」









王女が、誰かと結婚_________
当然、その相手は貴族。
クニッツではない・・・。









「それも、”貴族同士”で!!
私・・・なんとなく、感じるの・・・
もう13だし、そろそろ結婚させられるんじゃないかって・・・。
でも、私・・・っ
政略結婚なんて嫌・・・!恋をするなら・・・結婚するなら・・・
愛し愛された人以外考えられない・・・!
お互いの身分なんかどうだっていいのに・・・。」
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