夢小説 ATTACK ON TITAN


□5話
2ページ/4ページ

ドクドクと。
私は______……
“おいガキ、 無事か?” “また餌にされるな……移動するぞ。 つかまってろ”
“いいかガキあいつを仕留めるしかねえようだからその間、 この手を離すぞ。
俺が剣を振る一瞬の間だけな。 その間、 俺にしがみついてろ。
万が一落っこちたとしたら……拾ってはやる”
“わかりました……あなたを信じます。
だから私、 絶対にこの手を離しません”
灰色の瞳に映ったあのときの私、 あのときのリヴァイ兵士長と重なった息づかい。
“よし、 いい度胸だ。 びびって小便漏らすなよ”
“ガキにしてはよく耐えたな”
“ここを急いでまっすぐ進め、 船で脱出できる”
今の私は……あのとき、 リヴァイ兵士長が戦ってくれたから、 私を助けてくれたから、 ここにいるのだ。

「おい! 俺達は仲間に一人で戦わせろと学んだか!?
おまえら! 本当に腰抜けになっちまうぞ」

ジャンが立ち上がり、 みんなが次々と剣を抜く。 私も、 そのなかのひとりだ。
“生き残って這い上がって来い……! ……絶対にだ”
死にたくない。 
だけど、 兵士である以上は戦わなければいけない。
それならば、 死にもの狂いで勇気を振り絞って戦って生き残るのだ。
這い上がりつづけてみせる。 どこまでもどこまでも。
そして……リヴァイ兵士長にまた会うそのときは、 自分の気持ちを伝えよう。
隣で、 マルコは一瞬、 片目を覆いながらため息をついた。
目を合わせて頷き、 私たちは飛び立つ。
ミカサは猛スピードで飛び、 巨人の急所を切りつけながら進んでいる。

「急げ! ミカサに続け! とにかく短期決戦だ!
俺達のガスがなくなる前に本部に突っ込め!」

ミカサに先導されるようにつづき、 ジャンが私たちの指揮を執った。
______ミカサは速すぎて、 姿はもう見えない______
本部のすぐ近くまで進めたのはいいけれど、 再び立ち止まってしまう。
群がる巨人の数があまりにも多すぎるのだ。
下で、 トムが悲鳴を上げた。 ガス切れで飛べなくなったのだ。
たちまち巨人に囲まれるトム。
私たちは、 彼を助けたくても助けられない。
ただ、 見ていることしか……

「よせ! もう無理だ!」

ジャンが声を張り上げた。
ふたりの仲間がトムを助けようと立ち向かったけれど、 トムにつづいてふたりも巨人に食べられた。
千切られる体、 飛び散り、 滴る血。
肉と骨が噛み砕かれる音……
ただ、 見ていることしかできない。 この、 地獄の光景を……。
五年前、 マリッサとバートが食べられたのと同じだ。

「今だっ! 巨人が少しでもあそこに集中している隙に、 本部に突っ込め!
今しかない……どのみち……ガスがなくなれば終わりだ
全員で突っ込め!」

ジャンの指示で私たちは再び、 一斉に飛び立った。
伸びてくる巨大な手を、 風と共に切る。
この一瞬で、 いくつもの悲鳴が聞こえた。
この一瞬で、 何人かが死んだ。
本部の窓ガラスを突き破って飛びこんだときには、 息が切れていた。
胸を突き抜けそうに脈打つ心臓が、 生きてここに辿り着けたことを実感させる。

「こいつらだ! 俺達を見捨てやがったのは!
てめぇらのせいで、 余計に人が死んでんだぞ!」

補給班に怒り狂って拳を振り上げるジャンを、 マルコがよせと必死に押さえつけた。

「伏せろ!」

ライナーが叫んだ直後、 巨人の顔が壁を突き破ってきた。
“ミカサはどこ行ったんだ!?”
“早く! 中に……”
“よせ! 一斉には出られない!”
“ミカサはとっくにガス切らして食われてるよ!”
みんなが一斉に逃げようとするなか、 ジャンは固まったようにその場から動こうとしなかった。

「ジャン、 早く逃げないと……」

私はジャンに向かって急き立てた。
破壊された壁から、 ふたつの巨大な顔が覗きこんでいる。
せっかく本部まで辿り着けたのに、 補給作業ができずに全員食われてしまう……
誰もが、 そうあきらめかけていた。
一瞬が、 スローモーションのように巨人の顔が巨人の拳で歪むまでは……。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ