それぞれのSweet day's


【第一弾 越前リョーマとカルピン編】
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【第一弾 越前リョーマとカルピン編】




アーモンドアイズは見た




「わあー・・・・! この子がカルピン?
確かに狸に似てるかも! でも、可愛いねえー・・・・
もっふもっふのふっさふっさー! 」






2月1日
春を思わせるうららかな陽気だった。
まさに昼寝とひなたぼっこには持ってこいの日。
そんな日の夕方だった。あの子が我が家へやって来たのは。
初めての客人に、ほんの少し警戒した。
様子をじっと窺うかのようにして、ふさふさの体をぴくりと制止する。
あの子の一歩後ろにはリョーマくんが立っていて
ひとりと一匹をじっと見つめている。

優しい女の子だと思った。
そのまなざし、抱き上げる手つき、のどや頭を撫でる手まで優しかった。

あの子は青いアーモンドアイズをじっと、だけど優しく見つめ、
リョーマくんはそんなあの子の背中と横顔をそっと見つめていた。

何年も一緒に暮らした仲なのだ。
リョーマくんのその目を見るだけでわかる。
この女の子はリョーマくんにとって”特別”な人なんだね。
リョーマくんはこの女の子のことが好きなんだね。
僕もこの子のこと、なんだか好きになっちゃったみたい。



2月6日
このあいだのポカポカ陽気はどこへ行ったの?
外は一面真っ白!雪が降っている。
ああ、寒い寒い。
こんなにふさふさな体をしていたって、猫はもともと寒がりなのだ。
リョーマくんが散らかしたゲーム機やソフトを跨ぎ、ベッドへとジャンプ。
脱ぎ捨ててあるパジャマも跨ぐ。
うん、この辺りにしよう。
僕はリョーマくんのベッドの上で丸まった。

そして足音が聞こえて来た。

____リョーマくんだ! リョーマくんが帰って来た!

あれれ? でも、足音はふたり分のようだ。
誰だろう? あ! このあいだ来た子だ!






「座ってあったまりなよ」






リョーマくんは散らかしたゲーム機やソフトを足でガチャガチャと退かして、
カチッと電気ストーブのスイッチを入れる。






「あ、ありがとう・・・・」






あの子は遠慮がちにその場に座った。
よくよく見れば、リョーマくんもこの子も、頭や肩が溶けた雪のせいで濡れていた。
なるほど。雨宿りならぬ雪宿りだね。
まずはごあいさつ。
ホアラーと、声を上げてあの子にすり寄る。






「あ、コラ! カルピン! 制服が毛だらけになるだろ」






______ふんだ。

とかなんとか言っちゃって。
リョーマくん、本当は僕にヤキモチ妬いてるくせに。






「カルピン! 私のこと覚えててくれたんだね。
よしよし、いい子いい子。
カルピンの体、あったかいねえ・・・・」




僕はあの子の膝の上に乗っかって、再び体を丸めた。
ああ、いい気持ち。
リョーマくんが羨ましそうに僕を見つめている。
大丈夫だよ。リョーマくん。
あの子を取ったりなんかしないよ。
ここでは少し、僕もあの子に甘えていたいだけなんだ。



2月7日
この日、帰宅したリョーマくんの顔を見たら、どこか機嫌が悪そうだった。
僕はホアラーと、声を上げたのにリョーマくんは知らんぷり。
僕を知らんぷりしたまま横切り、ベッドにごろんと大の字で仰向けになった。
ああ、そんな風に寝転がられちゃうと僕の入るスペースがなくなっちゃう。
リョーマくんの上にジャンプして、尻尾をゆさゆさふさふさ揺らす。






______ねえねえ、どうしたの?どうして今日はそんなにご機嫌ななめなの?






「カルピン、邪魔。重い」






リョーマくんは僕を払いのけるようにして、ごろんと背を向けてしまった。
必然的に僕はベッドの下へと追いやられる。
リョーマくんは背中を向けたままだ。
ときどき憂鬱そうなため息をこぼす。

きっとリョーマくん、あの子とケンカしちゃったんだ。
そっかそっか。だからこんなにご機嫌ななめなんだね。



2月14日
リョーマくんは相変わらずご機嫌ななめ。この日の朝もだ。
菜々子さんが朝ごはんにリョーマくんの大好きな焼き魚を出しても
リョーマくんはほとんど食べずに学校に行ってしまった。






「リョーマさん、最近元気がないみたいね。
大丈夫かしら・・・・」






リョーマくんの後ろ姿を見つめて、菜々子さんがぽつり。






「ほっとけほっとけー! アイツは元々愛想悪し、いつものことだろ」






リョーマくんのお父さんは相変わらず。






「って、あーっ! おじ様!? 新聞読みながらのごはんはやめて下さい!
それに、新聞の下にまたエッチな本隠してる・・・・っ!」






もったいないから、リョーマくんが残したお魚は僕がいただき!

リョーマくん、まだあの子と仲直りできてないんだなあと考えながら
焼き魚を頬張る。
今日こそは仲直りできるといいねと思いながら丸ごとぺろり。






「ただいま、カルピン」






帰って来たリョーマくんはうきうきしていた。
部屋にいる僕を見つけるなり、頭を優しく撫でてくれる。
あれれ?リョーマくん、あの子と仲直りできたのかな。

リョーマくんはしばらく僕の頭を撫でると、バックから大切そうに何かを取り出した。
小さな箱に綺麗なリボンがかかっている。
リョーマくんがそれを膝の上に乗せてリボンを解くと甘い匂いが漂う。






____チョコレートだ!






ハート型のチョコが入っている。
僕はふんふんと鼻をひくつかせて甘い匂いを嗅いだ。
おいしそう・・・・






「ダメだよカルピン、これは俺のチョコ。
俺がもらったんだから・・・・・・」






そっかそっか。そのチョコレートはあの子がリョーマくんにプレゼントしたんだね。
仲直りできたんだ。よかったよかった。
僕もなんだかひと安心。

リョーマくん?チョコはそうやって見つめるんじゃなくて食べるものだよ?
食べないなら僕が食べようか?

僕が見たリョーマくんの横顔はうっとりとしていた。
あの子はすごい女の子だね。
クールなリョーマくんにそんな顔させちゃうんだもん。
でも、たまには僕もあの子にまた甘えたいなあ・・・・






「よう! 青少年! いっちょ前にいいもん持ってるじゃねえか!
どれ、俺にも少し食わせろよ」

「わ・・・・っ! バッ・・・・! オヤジ!
ノックくらいしろよ!」






突然部屋に入って来たリョーマくんのお父さん、
リョーマくんがもらったチョコを半分も食べちゃった。
・・・・やれやれ。
そのせいで、またリョーマくんがご機嫌ななめになっちゃった。

その騒ぎから脱出するように僕は部屋を出て
菜々子さんにごはんの催促へと向かう。

ホアラー!



++END++

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