僕らの恋心
□拓真の妹 現る
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「ぎりぎり間に合ってよかった…危うく先こーに説教くらうとこだったし」
「だよな…。 なんか疲れた」
あれから体育の授業が終り、今は二人仲良く下校中。
「あ、母さんに電話しなくちゃ…」
拓真はそう言って携帯を取り出し、母親に電話をかけ始めた。
「そういえば電話きてたんだっけ…? お前なんかしたのか」(ニヤニヤ)
「なんもしてねーよ! どうせくだらないことで電話したんだろ?…あ、もしもし母さん?」
“もしもし拓真?あんたが電話出ないから心配してたのよ!!”
受話器越しに母親が溜め息をつき、何やらぶつぶつと文句を言っている。
「ちょっと急いでたから出れなかったんだよ。 でなんか用?」
“あ、そうそう! 大変なことが起きたのよ!!”
「なんだよ…」
“悠梨がいなくなったのよ!!”
「はぁ!? 悠梨が…何で?」
拓真が驚愕の声をあげたので、隣にいた輝が不思議そうに拓真を見つめた。
“知らないわよ…。 とりあえずどっか行ってるとは思うんだけど…もし拓真のとこにいたら連絡ほしいんだけど”
「わかった。けどあいつがここに来る訳………」
拓真が溜め息混じりに答えようとした時――
「お兄ちゃーん!!」
明るい声が前方から聞こえてきたので、声がした方に視線を向けると、そこには何やら見覚えのある少女が沢山の荷物を抱えているのが見えた。
「……!!!!」
まるで彼の周りだけが時間が止まってしまったように、拓真はその場に凝り固まってしまった。
“もしもし拓真? 聞いてるの?”
拓真の返答がないので、母親が不信がり問い掛けるが、今の拓真は上の空になり、何も聞けないでいた。
「拓真お兄ちゃーん!!」
「………悠梨…」
そこには満面の笑みを浮かべた少女――鈴木 悠梨がこちらに手をふっていた。