僕らの恋心
□拓真の妹 現る
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温かい日の光りがさんさんと降り注ぎ、辺りの木の葉が緑色に美しく輝いている頃――
「ふぁ……眠い」
学校の屋上で寝そべる一人の少年がいた。
黒い髪がさらさらと風に靡き、対象的な紅蓮の瞳には青空が映っている。
彼――鈴木 拓真は欠伸をしながら授業中の時間を屋上で過ごしていた。
彼は、理数系や体育以外の授業には興味がないので、学校生活のほとんどを屋上でサボっているか、教室で寝ていた。
「次の授業ッてなんだっけ…」
ぼっとしている頭で考えていると、ガチャリと屋上のドアが開き、一人の少年――瀬川 輝が息を切らせながら屋上へと慌ててやって来た。
「拓真!!…はぁ…何してんだよ…っ!」
藍色の瞳が拓真の姿を捉え、彼が寝そべっているタンクへと小走りで近付いて来る。
「おぅ輝か…どうしたんだ?」
「どうした……じゃねぇよ!
お前…体育だってのに、何してんだよ? 出なくていいのか!?」
拓真は、輝の言葉にハッとし、急いでタンクから飛び降りた。
「おっ、そっか! やっべ…忘れてた」
「いいから早く行くぞ!! ほら体操着持って来たから」
そう言って持ってきた体操着袋を拓真へと投げた。
「ありがと…おっしゃ行くか!!!」
二人が体育に行く為に急いで走り出そうとしたその時...
<ブーッ ブーッ>
拓真のポケットに入っている携帯のバイブが鳴った。
「ん…? 携帯が鳴ってる」
拓真は急いで携帯を取り出し、ディスプレイを見て驚いた。
《Coal:母さん》
「母さんだ…なんで母さんから電話かかってきてんだ?」
「何してんだ!? 早く行くぞ!」
「お…おぅ!!」
通話ボタンを押そうとしたが、輝に急かされ、鳴っている携帯をポケットへとしまい込んだ。
【なんかあったのか? 後でかけ直そう…】
この時拓真は何か嫌な予感を感じた。
がしかし、今は電話よりも体育に間に合う事が先決と思い、輝の後を追う為に走りだした。
まさかこの時の嫌な予感が本当に当たるとも知らずに――